No.492でウィルタネン彗星の写真で赤道儀追尾しているのに周りの恒星が線状になった原因は彗星が地球接近に伴って急速に見える位置が変化しているからと記述しました。それについて実際の写真とStellariumで作成した画像とで確認してみました。

たぶん光害のない地域で赤道儀で数分間追尾して撮影すると日周運動に彗星の移動速度が加わって点状に写らないと思います。もちろん、彗星のみを自動追尾する場合や低倍率、広角で撮ればどちらも点状に写り、問題はないのでしょう。

(1) 写真の合成処理

写真は200mm(APS-Cサイズなので35mm換算で320mm)で撮りました。写真をRegiStax(Ver.5や6がありますがここではVer.5を使用)でいつものとおりAlignment box sizeを大きめの256として処理したら彗星が帯状になってしまいました。Sizeを64にして彗星に注目させて再度処理したところ、今度は彗星が点状になって、恒星は線状になりました。

この2枚の写真を彗星近くの部分を拡大して写真1に示します。上が前者の条件、下が彗星に着目した後者の条件で処理した写真です。

撮影時間は2018/12/15 18:10~同18:30までの20分間で撮影した30枚以上の写真を利用しています。

写真1

さらに以下のように中心部の彗星部分をさらに拡大し写真2のとおり並べてみました。違いが良くわかると思います。

写真2

(2) Stellariumによる画像を利用した合成処理
Stellariumで、撮影同日同時刻で1分ごとのシミュレーション画像を22枚を取得し、写真1と同様の範囲をトリミングして上記と同様に処理しました。これを画像1に示します。写真1の写り具合と同様の結果になり、処理条件により、彗星が線状になる場合と恒星が線状になる場合の両方が得られます。

画像1

なお、画像1のStellariumでは暗い星は表示されていないようですが、写真1と比べると主要な恒星は同じような位置にあるので相互に比較用として正しいと言えます。

画像1のStellariumの処理前の元画像を連続して前後で比較すると彗星の動きだけが左(北の方位)に移動していることがわかりました。一週間以上前の写真では同様の処理をしても気が付きませんでした、たぶん地球に近づきつつある段階なので変化はそれほど大きくなかったためかもしれません。しかし、昨日2018/12/15は彗星が近日点を通過した直後で、なおかつ地球に最も近づいたことから見かけ上(方位の変化)急速に変化したためと考えられます。もちろん彗星または恒星のいずれの追尾の方法を選択しても焦点距離が短めの撮影であればほとんど影響はないと予想されます。

久しぶりの明るい彗星が見えるとのことで注目しましたが、撮るのと写真画像処理の疑問をきっかけにウィルタネン彗星について公開情報で調べた結果、木星あたりを最も遠くにした5.4年の周期彗星で、今回たまたま近日点近くを通過直後に地球に約1200万kmと接近したため4等級程度で明るく見え話題になったと理解しました。次回の近日点は2024年5月でこの時は地球は太陽を中心にして反対側に位置するので11等級以下の明るさのようで話題にもならない気がしますがどうでしょう。ステラナビゲータで調べたら今世紀中の今回のような4等級で輝く接近はなさそうです。