今年の金星内合近くの様子を自身で撮影する(例:No.1197No.1198)と共に「ひまわり9号」による地球画像(NICT:情報通信研究機構から)の背後に写る金星を毎日追跡しました。実写では明るい空の中でも細い金星に魅せられて二、三度撮ると満足してしまい、内合後は一度も撮っていませんでした、これはイカン、まだ間に合うかもです。

単純に細くなった金星の写真は美しいものでかなりの数公開している例が見られますが、個人的に興味を持った内合前後の短期間における変化の様子は見かけられません。そこでネットで検索しました。下記リンクの例として過去のデータになりますが倉敷科学センター さん、CometAKYの星空探訪さんの例です。他にもあるものと思われますがさらに追跡検索はしていません。

https://www.astroarts.co.jp/photo-gallery/photo/18542

https://blog.goo.ne.jp/cometishikawa/e/f21d2e4e1bfaa580e7fab0a90cba105e

このような実写版の作成が余裕を持って実行できれば良いのですが自由にならないので、その代わりにひまわり9号の画像により金星の連日の変化が表現できないものかと思い立ちました。その画像では金星は小さくピクセル数も少ないので粗く見えてしまうのですが、それでも細い金星の形、経時変化程度は把握できます。

今回「ひまわり9号」の画像で金星が写っていた時期は確認結果から2023/07/23~2023/08/23(見逃しがあるかもしれません)の一か月間でした。この作業は金星画像は地球画像に比べて極めて小さく、暗いため探し出すだけでも大変なのですが慣れてしまえば日課として楽しいものでした。

写っていた全画像をSiriusComp64で比較明処理し画像1~画像3に示します。比較明処理ですので画像1では地球がほぼ全周にわたって太陽光が当たっているように見えてしまいますので注意。画像1は原画像は11,000×11,000サイズですが1/5のサイズにしています。この画像1の北側トップの狭い範囲をトリミングして金星数十個を浮き出すために明度調整を行った画像を画像2および画像3に示します。画像2は地球の北側上部の背後左側、画像3は右側の宇宙空間を拡大したものです。拡大して表示すると円弧上の金星がわかります。背景がステップ状に見えているのはひまわり9号が捉えているスキャン範囲です。太陽が近くにいるために明度を上げると背景として浮かび上がります。この外側はデータはありません。気象衛星ですから地球表面が写っていれば良いのであって、その外側は必要がありません。しかし、この狭い範囲に月や惑星が写る場合があるのです。

円弧の金星の形がバラバラですが一度南に向かい、以後また戻って北方向に消え(写らなくなる)、これらが混ざっているためです。

画像1 2023年7月~8月に金星が写っていたひまわり画像約40枚の比較明処理(ひまわり画像はNICTから)

画像2 金星が写っている範囲の拡大、明度調整画像(画像1の上部左側をトリミング処理)2023/07/23~2023/08/23

画像3 金星が写っている範囲の拡大、明度調整画像(画像1の上部右側をトリミング処理)2023/07/23~2023/08/23

これらの金星が写っていた日時のリストを参考欄に示しておきます。この中から、金星の内合が8月12日でしたのでその前後の+-10日時点の三枚の金星の姿を例にして画像4に示します。内合前後は左右反対に明るい部分が見えています。ほぼ内合時の中央の画像は金星の北が細く光っていてしかもかなり暗くなっています(新月みたいに真っ暗になりません、これは後記する動画1の説明にあるように金星が太陽の南にあるため北側が細く光る)。金星画像はひまわり9号の撮影スキャンの方法からRGBがわずかに分離し赤、青、緑が連なってしまいます。

画像4 ひまわり9号の画像に写った金星の姿、抜粋表示

金星内合前後+-10日間の20枚の金星画像をトリミングしてGIF画像にしました。動画1に示します。一日間隔のデータがありましたので20日間を数秒で表示しています(画像が粗いので高速変化の方が見易い)。金星は南北を縦軸に回転補正しています。

今年の金星内合時は地球から太陽を真正面に見た場合、金星は太陽の南(下)に位置しています。このため左側から太陽に近づき右側側面が光っています。内合時には金星は太陽の南側に位置しますので金星の北が光ることになります。その後、金星は太陽から遠ざかり今度は左側が光ることになります。20日間の連続変化は連想してみてください。金星の光っているリング状の部分は金星の東側から北に向かって回転移動し西側にしかも短期間で変化します。動画1ではそれが読み取れるでしょう。画像はトリミングして南北回転補正した以外原画のままです、このため、金星リングの幅や、明暗がわかります。参考欄に明度を上げた動画を添付しておきます。本記事のタイトル画像にもなっています。

動画1 ひまわり9号による画像に写った内合前後20日間の金星の光る部分の変化

以上、実写版でなくても粗い画像にはなりますがひまわりの画像でも金星の内合の変化を整理することができました。

ステラナビゲーターで将来について確認したところ、ひまわりがこのまま運用されていた場合、2025/03/21の内合時は(内合後のみで前は写らない)、2026/10/22、2028/06/01、2030/01/06の内合時はスキャン範囲内に全く写らず、2031/08/10の8年周期で今回と同様の内合前後の変化が写ると考えられます。

まぁ、ひまわり画像に期待するのではなく実際に自身で、今年のは金星の光るリングは北回り、南回りと意識すると面白いと思います。ただ数回の撮影で満足するのではなく観測、撮影してまとめられると良い(自分への言い聞かせ)。なお、内合前後の観測は太陽が近いので直視等は絶対に避けなければいけません、十分安全に注意しながら観測、撮影が重要です。

ひまわりに金星が写る可能性のチェック。
2025/03/21 金星は太陽の北 光るリングは南回り ひまわり衛星では内合後のみ
2026/10/22 金星は太陽の南       北回り ひまわり画像には写らず
2028/06/01 金星は太陽の北       南回り ひまわり画像には写らず
2030/01/06 金星は太陽の北       南回り ひまわり画像には写らず
2031/08/10 金星は太陽の南       北回り ひまわり画像で前後写る可能性有


参考欄

(1)ひまわり9号に写った金星(2023年夏)

リストに無い見逃している日時の可能性はあります。

表A-1

(2)2023年内合前後(2023/08/01~2023/09/23)の金星の変化(本文の画像を明るくしました)

動画A-1 ひまわり9号による画像に写った金星の内合前後+-10日間、計20日間の形状変化