No.526に続きます。前回は極軸合わせのための利用される天の北極及び南極付近の星空についてふれました。


今回は極軸望遠鏡の恒星スケールパターンと実際の星との位置を対比確認してみます。現実の望遠鏡を通して見える恒星をスケールパターンに合わせて確認するのが良いのですが、ここではステラナビゲータのシミュレーターとの星空の比較になります。なお、項番号や図番はNo.526に続きます。

4. 極軸望遠鏡の恒星スケールパターン
極軸合わせはPF-L2及びTKのどちらも暗視野照明ライトで望遠鏡の中に浮かび上がった描かれた恒星位置のスケールパターンに現実に望遠鏡を通して見える恒星を合致させて行います。取扱説明書によれば北半球では北極星、こぐま座δ及びケフェウス座51の3つの恒星が利用されています。南半球では「はちぶんぎ座」の南極に近い恒星が利用されています。

両望遠鏡の中に見えるパターンを暗視野照明ライトをオンにして最大の明るさにして接眼レンズに当てて撮影しました。それを図12に示します。

図12 極軸望遠鏡内の恒星スケールパターン

どちらも実線が北極用スケールパターンです。北斗七星とカシオペア座の絵は星空に見えている同星座の方位合わせ用のガイドです。それ以外の点線等の目盛りスケールのような表示は南極用のスケールパターンです。方位合わせには南十字星、Eri-α(エリダヌスα星)をガイドに利用しています。PF-L2は2015、2020、2025、2030、2035、2040年の目盛り、TKには2005、2010、2020、2030の目盛りが付いています。これは地球がコマのように軸心が首振りにより変化し、星の位置が年によって微妙に変わるためです。

北半球における極軸合わせのパターンはPF-L2もTKも同じですが、南半球用のパターンは南十字星方位を初期ガイドとして利用することは同じですが極軸合わせに使用する恒星は少し違います。

5. 北半球における天の北極用恒星スケールパターンと実際の星空との関係

最初に北半球用についてPF-L2とTKのスケールを重ね合わせました。これを図13に示します。

図13 天の北極用の恒星スケールパターンの比較(水色がPF-L2でオレンジがTK)

PF-L2のパターン図は青色に変えて合成しました。パターンを比較すると望遠鏡の倍率の違いで天の北極からの長さが異なっていますが角度は同じです。

さらにこのスケールパターンが実際の星と一致するか確認しました。上記合成写真において見にくいので北半球用の恒星スケールパターン以外を削除すると図14の通りになります。青がPF-L2でオレンジがTKです。

図14 天の北極用の極軸合わせに利用する恒星スケールパターン(水色がPF-L2でオレンジがTK)

天の北極に近い恒星を実際に望遠鏡を通して一致を確認すれば良いのですが、ここではステラナビゲータのシミュレート画像とで比較します。No.526の図6に天の北極に近い星を黄色、赤、緑で示しましたが、望遠鏡では倒立像になりますから180°回転させます。さらに図14のスケールパターンと比較を容易にするため少し回転させています。これを図15に示します。

図15 極軸望遠鏡を通して見られる天の北極近傍の恒星(黄色は北極星)

これを極軸望遠鏡に描かれている図14のスケールパターンと重ね合わせると図16のとおりになります。水色のPF-L2用とオレンジ色のTK用のどちらもスケールパターン恒星導入位置に各恒星が重なり一致しています。なお、図15の画像は実際の望遠鏡の倍率を通しての恒星の位置をシミュレーションした画像ではないため、精度までの評価はできませんし、それを意図にしていません。

図16 極軸望遠鏡内の恒星スケールパターンと実際の恒星との合成(拡大率、回転を繰り返して合成)

6. 南半球における天の南極用恒星パターンと実際の星空との関係

次に南半球の天の南極についても同様に比較します。図17にPF-L2とTKの両方の恒星パターンを重ね合わせた画像を示します。水色がPF-L2でオレンジ色がTKのパターンです。初期ガイドとなる南十字星とエリダヌス座のα星アケルナル(点線の概略的な方向)の利用は同じです。

図17 天の南極用の極軸合わせに利用する恒星スケールパターン(水色がPF-L2でオレンジがTK)

図17に示したスケールパターンに相当する星空をステラナビゲータにより描画し、かつ指標の対象星を星印にしました。星空は倒立像にして、スケールパターンとほぼ回転角が一致するようにしました。これを図18に示します。

図18 極軸望遠鏡を通して見られる天の南極近傍の恒星)

これを極軸望遠鏡で見えている図17のスケールパターンと重ね合わせると図19のとおりになります。角度だけではなくて天の南極からの距離(長さ)も一致しています。

図19 極軸望遠鏡内の恒星スケールパターンと実際の恒星との合成(拡大率、回転を繰り返して合成)

7. まとめ

星空全体を見渡した時の極軸望遠鏡に利用されている恒星スケールパターンを図20及び図21に示します。極軸望遠鏡の中に描かれている恒星スケールパターンが星空に見えている上記恒星と対応していることを再確認しました。(当然の事でしたが)

このような確認を通して極軸望遠鏡の恒星スケールパターンってどう製作されているのか知りたくなってしまいました。軸断面図やレクチル(ガラスに恒星スケールパターンが描かれている)に恒星スケールパターンを製図するまでの方法等。

しかし、使用には全く関係ないし、問題のないことですし、今まで通りブラックボックスとして利用します。

図20 天の北極とその周りの極軸望遠鏡用に使用されている恒星(PF-L2とTKも同じ)

図21 天の南極とその周りの極軸望遠鏡用に使用されている恒星(PF-L2は南極の下にある3恒星、TKは南極の下にある中央と左の恒星の2恒星と南極の上に位置する2恒星、計4恒星)