1. 概要

最近、ポラリエ用ビクセンVixen極軸望遠鏡PF-L II(以下PF-L2と記す)をアクセサリーの一つに加えました。図1にその外観を示します。

図1 極軸望遠鏡の外観

従来からテレㇲコ工作工房のTKオリジナル極軸望遠鏡(以下TKと記す)により、ごく当然のように北極に向けて赤道儀ポラリエの極軸合わせを実施し撮影を楽しんできていますが、この新製品購入の機会に極軸望遠鏡内に見える恒星スケールパターンが気になり、どの星を対象としているか確認してみることにしました。

もちろん、極軸合わせに北極星、その周りの恒星を指標としていることは取扱説明書にも書かれていますし理解していますが、スケールパターンをもう少し星空の中の位置と広がりを感覚的に捉えておこうと思いました。

ステラナビゲータによる星図を利用し極軸望遠鏡PF-L2及びTKの恒星スケールパターンと対比させて確認しました。

比較した結果は以下のとおりです。

・極軸望遠鏡の天の北極用向けの恒星スケールパターンは当然のことなのですがPF-L2とTK共に同様で3個の恒星で星図と合致。天の南極用向けはPF-L2は3個、TKは4個の恒星スケールパターンで星図と一致していました。

・恒星スケールパターンの範囲は狭い視野角だと思っていましたが、広く、視直径にすると6~7°。望遠鏡を通してみるから狭い範囲と思っていましたが、倍率を考えればすぐ気が付くことで慣れていないためです。

以下にその結果を整理します。

2. 極軸合わせに利用される星空

赤道儀を正確に作動させるために赤道儀の回転軸を天の北極か天の南極に向ける必要があります。しかし、図2のように天の北極を例にするとどこが北極なのかはわかりません。北極星は真の北極に位置しているわけではありません。カメラを北極方向に正確に向け6時間シャッターを開け放しに撮影できた場合、図3のような写真になります。図2及び図3は例として2019/02/21 21:00と6時間後の空をステラナビゲータにより方向、高度を天の北極に向けて作成した画像です。

図2及び図3の天の北極近くの部分を拡大して図4及び図5に示します。クロス線の交点が天の北極です。その交点に最も近い白い点または円弧が北極星です。赤道儀の回転軸をこのクロス線交点に正確に向ければ赤道儀に載せられているカメラ全体も日周運動に合わせて回転(パルスモーター等で駆動)しますので恒星を追いかけることができるようになります。

3. 極軸望遠鏡の恒星スケールパターン

図4及び図5に示したように天の北極点には星はありません。この交点に赤道儀の軸心を向けるには天の北極に近い恒星を利用します。赤道儀の軸心=極軸望遠鏡の中心をこの天の北極に合致させるために望遠鏡内部にあらかじめ恒星が描かれています。これをここではスケールパターンと呼んでいますが、実際に極軸望遠鏡を通して見える恒星をこのスケールパターン上に一致させれば天の北極に向いたことになります。これが極軸合わせです。(後述しますが上記星図は眺めたままの正立像なのですが望遠鏡を覗く星の位置は倒立像になり反転しますので星図もそれに合わせて描かれています)

天の北極用の極軸合わせには恒星スケールパターンとして明るく見やすい北極星とそのまわりにある複数の恒星が利用できます。ふさわしいと思われる恒星3点(北極星が黄色)を色付きで図6に示しました。(極軸望遠鏡に指標として採用されている恒星を再確認しただけです)

図6 天の北極の近くで極軸合わせに利用されている恒星

この3点が描かれている極軸望遠鏡内のスケールパターンと合致させれば赤道儀の回転軸は天の北極に向いたことになります。望遠鏡を覗くと最初はこの3点がどの回転方向にあるか迷います。このために北斗七星やカシオペア座も望遠鏡内にガイドとして描かれており、このガイドと実際の星座の位置を一致させれば3恒星が容易に見つけられるようになっています。注意することは恒星スケールパターンは倒立像になっていること、逆に北斗七星やカシオペア座はおおよその星空の回転方向を一致させるガイドなので正立像になっています。

同様に天の南極方向の星空を図7に示します。例としてニュージーランド首都から天の南極方向を見た時のステラナビゲータによるシミュレーション画像です。図7の左側にある十字は南十字星です。わかりやすいので北斗七星やカシオペア座相当のガイドになりえる星座です。

しかし、この画像だと空のどこが南極かわかりません。北極の場合よりわかりにくいかもしれません。もし6時間分の星の軌跡を写真に撮ったとした場合の同画像を図8に示します。
こうするとおおよその南極の位置はわかるようになります。

南極中央部分の6等星級までの星が見えるとして拡大した画像を図9及び図10に示します。
クロス線の交点が天の南極です。北極星相当の恒星がありませんので少し暗い星になりますが、天の南極に近くにある星として3点があげられます。

これを望遠鏡の中に描いておいて望遠鏡を通して見える同じ星を合致させれば赤道儀は南極に向いたことになります。

図11に南極合わせに指標となりえる恒星を黄、赤、緑色で参考に印しておきます。(ここではPF-L2の恒星スケールを意識していましたので6等星級までの表示としました。しかし、後述しますがTKでは暗い恒星も利用されていることに気が付きましたので7等星級までの表示にするとこの3点ではなくてもっと多くあげられます)

図11 天の南極の近くで極軸合わせに利用されている恒星

以上が極軸望遠鏡に利用されうる天の北極及び南極の星空を示しましたが、後日、PF-L2とTKの内部を覗いて描かれている恒星スケールパターンとこれらの結果と対応させて確認してみます。(No.527として続きます)