1. はじめに
きれいな満月だと思ってカメラを向けても真っ直ぐこちらに向いているとは限りません。少しだけ視線が合わなくても気づかずキレイに写りますが、やはり記念写真であれば真正面を意識して撮った写真にしたい。
センタームーン、何のことだろうと「ほんのり光房」様の記事を読みました。月の秤動(くび振り運動)と検索すると多数のリンク情報に接しますが、それとは別にセンタームーンに特化した記事に引き込まれました。関連リンク先にも目を通しましたので文末に列記しておきます。
この記事では月面の「見かけの中心」と「真の中心」のお話から、月の秤動、その大きさ、さらに月と真正面に向き合えるタイミングなどいろいろ楽しめ、知ることができました。月面の真の中心(絶対地点)が定義されていて、秤動で月が真正面を向き「見かけの月面中心」と「真の月面中心」が一致した時をセンタームーンと呼んでいました。人間で言えば「少し顎を引いて」あるいは「ちょい右」などと、上下左右の微妙な顔の向きを指示されレンズに視線が合った時のようなものでしょうか。
この理解が進んだところで、それならば今年のセンタームーンを撮ってみたい、いつ月面はどのような顔を見せるのだろうかと上記記事のデータを参考にしながらステラナビゲータ11(以下StellaNavi)でシミュレートしてみました。
2. 今年のセンタームーンとその画像
上記記事にある月の秤動図からセンタームーンの時期を知ることができますが、StellaNaviを利用してその画像を得ることにしました。
最初に答えを述べてしまいますが、今年のピタリのセンタームーンは捉えられませんが、センタームーンと呼んでもおかしくない写真は撮れそうです。
(1) StellaNaviによるセンタームーンのサーチ
上記記事にあるパーフェクト・センタームーンマップを教材にしてStellaNaviでその月面画像を確認しました。マップの線上の場所を入力し、日時をセットするとピタリの画像が得られました。(後述する「見かけの月面中心」と「真の月面中心」が重なり合います。ここでは図示しません)。
ここで、StellaNaviの表示される情報を確認しておきます。
StellaNaviで月を拡大し中央固定表示とマークを選択すると緑色のクロス点が現れます。これが「見かけの月面中心」になります。天体メニューの太陽・月を選択し、さらに月の詳細メニューでコンパスとグリッドを選ぶと黄色の線と東西南北が表示されます。黄色の線がクロスした中央の点が「真の月面中心」です。
なお、月の天体情報のウィンドウ内に中央経度と中央緯度が表示されますが「真の月面中心」からのずれを意味しています。しかし、この数値は地心秤動(地球中心から月を見た時)のずれを意味し測心秤動(観測地点から見た月)のずれではありません。
最初この数値がゼロに最も近づく日時を探していたのですが、センタームーン選定には不向きな事に気が付きました。月の秤動図に示されていた地心秤動に基づく数値なためで測心位置からではセンタームーンにはならないからです。それよりもマニュアル方式になりますがメイン画面の月の画像を日時選択による高速モーションで短時間に見つけ出せることに気が付きました。数値でのアプローチはできませんがビジュアルでも10分程度の誤差で見つけ出せます。
(2) 今年のセンタームーンに近い満月
2021年の満月時の「見かけの月面中心」と「真の月面中心」を表示した画像をStellaNaviで取り出しました。測心点は横浜です(関東であれば変化は感じられないと思います)。選択した画像を表1に、これらの画像を元にしたアニメ画像を図1に示します。
月面画像は北を真上に表示しています。緑色の点が「見かけの月面中心」で、黄色の点が「真の月面中心」。どちらの丸い点もプトレマイオスクレーター(154km)の直ぐ上に位置するハーシェルクレーター(39km)の大きさにあわせました。途中赤茶色の月面も現れますが月食です。
満月時が昼間になってしまう場合撮影できる可能性はあるのですがここでは12:00より前の場合は早朝、12:00を過ぎた場合は夕方を選びました。また、満月時に月が沈んている場合はその前後で月が完全な姿として現した撮影可能な時の画像としました。
このアニメ画像からは満月の時の厳密なセンタームーンの実現はなさそうです。しかし、5月、11月、12月はセンタームーンに近い満月として意識して撮影すると楽しめます。特に5月26の皆既月食時の満月はスーパームーンでもあり、個人的にはスーパー・センター・ブラッドムーンと呼んでも良いのではないかと思います。今年の月食はそれを意識して撮りたい。参考にこの時のシミュレーション画像を図2に示します。
(3) センタームーンへのアプローチ
もっとセンタームーンに近い月も撮ってみたいと思い、StellaNaviで緑の「見かけの月面中心」点と黄色のクロス点が最も近づく日時を選び出しました。表2と図3に示します。
図3ではこの大きさで表示すると7月以降は黄色の丸い点が緑の丸い点を覆いつくしセンタームーンに見えます。8月16日は月齢7.7、完全なセンタームーンと呼んでも間違いないのですが、ちょうど月の欠ける境界に入り中心点が写りません。しかし、センタームーンには変わりはないので月面XとLOVEとの関係が気になります。もし写せれば、見つめ合ったことになりますから面白い題材となります。
その次に近いのは10月24日の月齢17.3です。参考に拡大した画像を図4に示します。39kmのハーシェルクレーターの大きさと比べて見かけの中心と真の中心との距離は数kmのようです。歩いて行ける距離なのでセンタームーンと言っても良いのではないでしょうか。
(3) 去年2020年の満月時のセンタームーンはどうか
2020年は「ほんのり光房」に載っている月の秤動から推察できるようにセンタームーンはありません。逆にセンタームーンから離れる場合どの程度月面が振れているのか確認しました。
それを表3および図5に示します。
3. まとめ
今までは漠然として撮っていた満月はきれいですけれどクレーターも見えにくくて三日月や上弦や下弦前後の月と比べて面白味が無いと思っていたのですが、センタームーンを知ると、これはとても面白い観察、撮影になると感じました。「ほんのり光房」様には感謝します。特に今年の皆既月食時はスーパームーン月食だけではなくてセンタームーンに近いことを意識して撮ってみたいとも思いました。その後もセンタームーンに近いチャンスも数回はありそう、楽しみたいと思います。
4. 参考リンク
4.1 「ほんのり光房」http://kuusou.asablo.jp/blog/
(1) センタームーンを観よう・Part1―2021/05/05
http://kuusou.asablo.jp/blog/2021/05/05/9374154
(2) センタームーンを観よう・Part2―2021/05/06
http://kuusou.asablo.jp/blog/2021/05/06/9374523
(3) 月の『真ん中』を見たことありますか?―2019/01/20
http://kuusou.asablo.jp/blog/2019/01/20/9027016
4.2 鹿角平天文台通信
(1) 2019年01月21日 センタームーン
https://kanotuno.at.webry.info/201901/article_7.html
(2) 2019年01月22日 センタームーンと月面図
https://kanotuno.at.webry.info/201901/article_8.html