太陽観測衛星SOHO LASCO C3の画像や気象衛星ひまわり8号の画像から惑星等の写りを確認することは楽しい。特にひまわり8号の画像には地球外の宇宙空間が写る部分があり、この狭い範囲に月や惑星が通過する時刻を予想して見つけ出すことは、天体撮影するのと同様にとても面白い。
今回は月ではなくて、金星です。
以前にも特集、参考記事にあるように三日月型の金星を確認しています。今回はLASCO C3画像に写っている金星を見て、ひまわり8号の画像にも写るチャンスがあると予想できましたので確認することにしました。ここでは、これらの画像を載せます。また、金星の写り具合から地球の大気による屈折の影響と考えられる現象も考察してみました。
(1)SOHO LASCO C3画像
先月、木星、土星が太陽の背後を通過した後、金星が逆方向から写野に入り始めましたが、昨日時点2021/03/06 14:06(UT) 23:06(JST)の画像を以下に示します。金星が右側に写っています。太陽の背後になります。今月末までに左に移動し太陽の下を通過します。外合は2021/03/24 07:14(JST)です。視直径は9.7″と小さい。
(2)ひまわり8号による画像
金星が地球の背後、かつ狭い写野に写る日時を予想して画像データをNICT:情報通信研究機構から探し出しました。金星は明るいのですが、欠けは無いし視直径が小さいのでどのように写るのかどうかも見当がつきませんでした。2021/03/06 23:00~2021/03/07 00:00の1時間6枚分(ひまわり8号の画像は10分間隔です。23:40のデータは無し)の画像をSiriusComp64で比較明処理し、かつそのままで点状の金星を見つけ出すことは不可能ですので強烈に明度等を処理して金星を浮かび上がらせるようにしました。その画像と拡大した画像を以下に示します。
左側のギザギザは太陽光を避けるためのマスキングです。元々は11,000×11,000の画像サイズですがそれぞれ1/5に縮小しています。金星はこの画像を拡大すれば見えます、光る点に過ぎないのでいまいちですけれど。2021/03/06 23:10、23:20および23:30に写っていました。この画像の下端部分を拡大した画像は以下のとおりです。なお、金星は4月中旬まで地球の背後に位置していますが、太陽に近づいたりしますのでマスキング等により認められる機会は少ないのかも知れません。
(3)ひまわり8号の金星が写っていた画像の謎の部分?
編集していて気が付いたことなのですが、中央の2021/03/06 23:20の金星の見えている位置が左右の金星の位置よりも下にズレていることに注目しました。下記の写真のとおりです。左の23:10と右の23:30の金星位置を結んだ直線よりも下にあります。しかし10分間隔の位置が等間隔であり水平位置では金星の光に間違いないでしょう(金星位置を赤丸で誇張しています)。
それではなぜ地球の陰に位置していたと考えられる金星が写っていたか。この理由として、ちょうど中央の23:20の金星は地球大気層にかかっており、もしかすると地球の陰になり直線的関係では見えなくても大気の光の屈折で見えるようになったのではないかと推察できます。このような現象はひまわり8号の画像では月の出入時に見られています。例えば月の上端が地球大気層にかかった場合、丸ではなくてなめらかな山状になりますし、下端が大気層にかかる場合は上部が丸なのに、下はしぼんだ形状に見えることがあります。