久しぶりになりますがPIPP利用シリーズ(8)です。今回はISSの月面通過した4K映像から比較明処理により一枚の軌跡画像を得ることを目的とします。月面通過4秒間の映像は三脚固定で35mm換算で2,000mmの焦点距離ですので地球の自転により月は流れてしまいます。これをPIPPで前処理してセンタリング化(月が固定された映像:疑似的な赤道儀追尾のようなもの)し、その後にSiriusComp64で比較明処理する手順となります。なお、本記事はPIPPの利用シリーズですので特集、参考記事の応用の「天体を画面中心に固定映像化(動画)する方法 -PIPPの利用-」の中に項目として追加しておきます。
1. 原動画ファイル
COOLPIX P1000で2021/01/20 17:22:59~17:23:03に撮影したISSが月面を通過した時の動画を動画1に示します。元は4K動画ですがファイル容量を小さくして表示するため2Kサイズに変換しています。標準倍速4秒間の映像ですがISSは瞬間に通過します。
動画1 ISS月面通過直前後の映像 原4K動画
右下から左上に向かって進むのがISSです。4秒間の映像ですが月が右側にシフトしていく様子がわかります(処理結果として月がシフトしない固定化された映像は最後に載せてあります)。
この映像から全フレームを取り出して、SiriusComp64で比較明処理すると図1のようになります。ISSの姿は拡大してもクッキリしていますが月の像がズレて少し横に広がった写真になってスッキリしません。
2. PIPP処理によるISSセンタリング映像の取得
ズレを取り除くためには原動画ファイルから、月をセンター化固定させた映像にする必要があります。PIPPにより「Source Files」の下部(Optimise Options For)でSolar/Lunar Full Discを選択し「Processing Options」で(Convert Colour To Monochrome)のチェック「☐」を外し、右欄の(Centre Object In Each Frame)および(Enable Cropping)ものチェック「☐」を外します。「Output Options」で(Output Format)でTIFF画像を選択し、「Do Processing」の(Start Processing)ボタンで全フレーム(120枚)を取り出します。
これら120枚のフレームを比較明処理をした結果を図2に示します。しかし、それでも月の画像に微妙なブレが含まれてしまい、月が中央に表示されているもののクリアな画像とは言えません。
そこで「Optimise Options For」でSolar/Lunar Close-upに変更し「Processing Options」で右欄の(Enable Surface Feature Tracking)にチェック「✅」されていることを確認し、右上にある(Test Options)をクリックするとAnchorが赤枠で表示されますので適当な月のクレーターなどの目立つ位置に設定し、上記と同様に全フレーム(120枚)を取得します。これを比較明処理した結果を図3に示します。図2のように月はセンタリング映像とはなりませんが、かなりクリアに表現された天体写真になりました。
3 センタリング映像の取得
第2項の処理で得られた120枚の画像から映像に再変換します。結果を動画2に示します。動画1に比べて月がブレず固定された映像になりました。仮想的な赤道儀化動画とも言えます。
動画2 ISS月面通過直前後の映像 原4K動画から月をセンター固定再映像化