COOLPIX P1000で撮影した惑星動画から通常スタックおよびコントラスト等の処理を通して画像が得られますが、今回は火星の写りがもっともらしい姿に近づけられないものかとソフトウェア利用の面で挑戦してみました。望遠鏡の写真のようにはなりませんが、ソフトウェアからひとつの試みです。
今回はPIPP利用シリーズ(6)としました。PIPPの前処理機能の利用からスタック処理が短時間にできるようになったため、試行の繰り返しが容易になり、その中のひとつの応用例を示すものです。
今回は、原動画 → PIPP → AutoStakkert!3 → RegiStax6 → TopazDenoiseAIの流れで処理した結果を示します。
最終的に得られた画像を以下に示します。
この画像はStellaNavigatorやStellariumによるシミュレーター画像とあまり似ていませんでしたので実際の望遠鏡の写真と比較することにしました。写真はAstroArtsの天体写真ギャラリーを参考にしました。火星が最接近の時期で多くの撮影例があります。
上記画像は2020/10/06 21:15に撮られたCOOLPIX P1000の動画(ISO-125, f/8.0, 539×3.6mm, 1/200秒/1フレーム)から得られたものですが、望遠鏡の比較対象画像はこの撮影時刻(1時間範囲内)に近い写真を選びました。望遠鏡写真は全て、100mm~200mm口径望遠鏡による写真です。これら以外にも写真例は多数あります、上記ギャラリーで確認できます。
https://www.astroarts.co.jp/photo-gallery/photo/65348
https://www.astroarts.co.jp/photo-gallery/photo/65337
https://www.astroarts.co.jp/photo-gallery/photo/65324
https://www.astroarts.co.jp/photo-gallery/photo/65292
https://www.astroarts.co.jp/photo-gallery/photo/65288
https://www.astroarts.co.jp/photo-gallery/photo/65262
これらの画像とCOOLPIX P1000の画像と比較すると火星表面の模様は良く似ています。望遠鏡のように模様境界など明暗がはっきりしませんが模様の広がり、明暗の領域は同じように写っています。
上記画像が仕上げられる過程を以下に示します。ここで、特にPIPPの応用はたまたまうまくいった例かも知れませんので、今後さらに明確化したいと思います。それと今回、AIノイズ除去ソフトを利用した例になりました。これももう少し利用を進めその有効性を確認します。
原動画は2020/10/06 21:15の2分07秒間の4K動画です。PIPPではPlanetaryを選択, 「Quality Options」でQuality Estimation とQuality Limitingは全部「レ」点、「Quality Algorithm Selection」はPeak Histogram Algorithm, 1200Frames Keepとし、他は全部デフォルトです。さらにイレギュラーな使用方法になりますが、前記方法で処理し得られた1200枚のクロップした全フレームを対象にPlanetaryからSolar/Lunar close-upに選択を変え、Anchor領域を最小にして火星中央の薄い模様の部分に設定し、再度Frameを得ました。
これらのFrameをAutoStakkert!3で処理し(10%利用率)、RegiStax6でWavelet処理、南極を下に回転してオリジナルのスタック画像としました。
上記処理後の画像はコントラストを強めて、明るさを暗くして模様を浮き出させました。アンシャープマスクをかけ、最後にTopazDenoiseAIで粗くなった領域を滑らかにしました。もっと明るくすると良いのですが、模様部分が薄くなります。好みで調整すると良いのでしょう。
当日は大気の揺らぎも大きかったように思われ、条件が良ければもう少し改善されるはずです。まだ、撮影チャンスはあります、大気の揺らぎが少なく、模様もクッキリとした領域をこちらに向いた時に再挑戦したいと思います。
最初に載せた写真を少し明るくして表紙(Title)にしました。それも載せておきます。