1. 概要
一つの動画ファイルから PIPP前処理、さらにAutoStakkert!3によるスタック等を組み合わせて作成した動画や画像は面白い。
取り上げたのは木星の4K動画(COOLPIX P1000により2019/08/08撮影)。望遠鏡無しの撮影として好きな例です。以前にAutoStakkert!3で処理した画像を載せましたが、あらためてPIPPによる処理を通すと短時間で少し変わった画像、動画が得られ、応用範囲も広がります。
ここで載せる内容は以下のとおりです。編集方法と手順は簡単に触れますが、まずは結果。(1)原動画、(2)原動画からの映像変換、(3)木星センタリング動画、(4)木星らしい静止画像、(5)木星と衛星の静止画像の計5種類の動画、画像です。
2.使用したソフトウェア
ソフトはPIPP(動画作成、スタック前処理に使用)、VideoStudio2020(動画フォーマット変換のみ)、AutoStakkert!3(スタック合成処理)、SiriusComp64(比較明処理)、PaintShopPro2021等(リサイズ、レタッチ等)です。PIPP、AutoStakkert!3、SiriusCompが天体専用処理ソフトウェアで、他は一般の画像、動画編集ソフトです。
3. 作成した動画と画像
(1)原動画
原動画を動画1に示します。COOLPIX P1000により木星を4K動画で撮影したものです。ガリレオ衛星も表現しようとしましたので逆に縞模様が薄くなっています。なお、PIPPで最初の7秒間を映像対象範囲とし、Resizeで縮小、センタリング無し。これを原動画としています。
動画1 原動画 COOLPIX P1000による4K動画撮影、衛星も映るようにシャッター速度を調整
木星に縞模様が薄っすらと、かつ右隣にガニメデ、イオが見えています。両方が映るように条件を決めたため木星本体にとっては明る過ぎます。木星の縞模様を目立つように原動画から編集してみます。
(2)原動画から映像変換(コントラストと明るさ調整)
縞模様を目立つような動画にするために、最初に原動画からPIPPで連続したフレームを取り出し、コントラストと明度を調整(ここでは全フレームに適用させました、対応レタッチソフトなら何でも良いでしょう)、再度PIPPにより元に戻す処理をしたのみです。結果を動画2に示します。少し縞模様が目立つようになったと思えます。一方、衛星は見えなくなってしまいました。コントラスト、明度等を変えれば好みに合わせて仕上げられます。
動画2 動画1の木星の縞模様を強く表現できました(一方、衛星は見えなくなってしまいました)
(3)木星センタリング動画(PIPP標準利用)
動画なので天体被写体は画面内を動いた方が面白味があるのですが、被写体を中央に固定表示したい場合もあります。特にスタックを意図しなくてもPIPP前処理機能の利用で木星センタリング動画が得られます。これを動画3に示します。PIPPのPlanetary オプションを選択すれば数ステップのボタンをクリックするだけでできてしまいます。
動画3 動画2から木星センタリング映像に変換
(4)木星らしい静止画像
動画3の全フレームをPIPPにより取り出し、AutoStakkert!3でスタック処理、さらにレタッチソフトで画像調整したのが以下の図1です。コントラストを強くして、明度を弱くしています。
木星の縞模様はクッキリと大赤斑も薄っすらと表現できました、しかしガリレオ衛星は見えなくなりました。この画像から明度を上げても衛星は浮き出ません。
ガリレオ衛星を目立つようにするために次の方法をとりました。原動画からPIPP前処理→AutoStakkert!3スタックで得られた画像を図2に、この画像をレタッチソフトで調整して図3のように衛星を目立つようにしました。
(5)木星と衛星-最終処理画像(完成画像)
図1および図3の画像を比較明で処理しても図3と同じになってしまいますので、図3の木星部分のみを背景色で塗りつぶした画像を準備します(図示しません)。これを使用してSiriusComp64で比較明処理すると図4のようになります。同じ原動画から作成していますので木星と衛星の位置関係にズレはありません。
木星の右下に大赤斑が見えています、ガリレオ衛星は木星(-2.4等)の左側にカリスト(5.7等、写っています)、右側に近い側からガニメデ(4.6等)、イオ(5.0等)およびエウロパ(5.3等)。COOLPIX P1000では木星らしく見える写真になっていると思います。拡大しても良いのですが、カメラ性能からこの程度で。
今回は木星と衛星が離れていましたから、背景が黒色のままでキレイに表現ができましたが、近すぎたりすると明るく調整したおかげで衛星部分と木星の明るさの広がりが重なり合ってしまいこのような処理ができません、ひと工夫が必要でしょう。いずれにしても一枚撮りでない限りは写真に処理方法を注記しておきましょう。