PIPP利用シリーズ(3)です。今回はISSの太陽面通過した時の4K動画をセンタリング動画および比較暗処理による一枚の画像を得ることを目的とします。比較暗処理はPIPPではできませんのでSiriusComp64を使用します。
ISS太陽面通過では映っているのは1秒間程度ですので、その間のフレームを抽出し比較暗処理しても太陽像の時間ズレは現れません。しかし、数秒間以上の全フレーム処理になると時間ズレが現れ太陽はラグビーボールのようになります。
ここでは5,6秒間程度の映像においても画面の中央にしたい、比較暗処理も太陽をセンタリング状態にして実行したい場合に適用するものです。
なお、ソフト、マニュアル等の紹介はこのシリーズ(3)から省略しました。マニュアルを読むことは重要です。が、まずはいきなり使ってみる体験型、結果論ですが使いやすくデザインされたソフトほど慣れも早いと感じます。不明確なところがあれば読めば良いのかもしれません。自分なりの手順と思い込んでこのページのように書き記しておけばノートになりますし、結局はマニュアルに近い手順になっているのではと思います?(自分用でもあります)。
以下にPIPP、SiriusComp64を通してセンタリング動画、比較暗処理による一枚の画像を得るまでの手順を示します。
1. 原動画ファイル
COOLPIX P1000で2020/08/30 09:40に撮影したISSが太陽面を通過した時の4K動画を示します。14秒間の映像ですがここでは説明表示用として太陽面通過前後の6秒間部分をトリムしサイズを小さくしています。再生3秒後に瞬間ですがISSが通過します。処理は元の3840×2160サイズのまま実行しています。
焦点距離は35mm換算で1,800mmです。上から下に向かって進むのがISSです。NDフィルターを付けています。6秒間で太陽が右上にシフトしていく様子がわかります。(この方が天体動画らしいかも知れません)
この映像から全フレームを取り出して(通常はセンタリング無し)、SiriusComp64で比較暗処理すると以下のように太陽が歪んでしまいます(6秒間でもゆがむのですが14秒間の原動画4Kサイズを処理して目立つようにしました)。処理方法は一般的だと思いますので省略。
太陽を追尾せず三脚固定で撮影しているため、太陽の位置が画像内で移動するからです。今回の場合、右上斜めに太陽が動いています。
2. PIPP処理によるISSセンタリング映像の取得
原動画ファイルから、太陽をセンター化させた映像を取得すると共に確実に太陽像に歪のないセンタリングさせた比較暗処理写真を取得するまでの流れを示します。
2.1 センタリング映像の取得
太陽をセンタリングした映像の取得です、どのような映像になるか確認してみます。
PIPPに原動画ファイル(14秒間の4K動画のまま)を読み込ませた後、以下の手順で進めます。スクリーンショットは載せていませんがPIPPを起動してその画面と比べると良いでしょう。
(1) 「Source Files」では右下にあるSolar/Lunar Full Discに「レ」チェックします。
(2) 「Input Options」の右側のInput Frame RangeでLimit Frame Rangeは「レ」を有りにし、Start Frame to End Frameを選択します。Start Frameは200とし、End Frameは300としました。
ここは素通りしても問題ないのですが、処理時間が長くかかります。14秒間の全フレームを対象とするからです。しかし、フレーム範囲を限定すれば短時間で処理が終わります。
今回、事前に14秒間の原動画を再生してISSが映っている時間は1秒以内ですが前後の空白部分も含めて再生時間が約7秒~10秒の約3秒間の範囲を適用し、上記の200フレーム目から300フレーム目までとしました。PIPPは200フレーム目までは高速で飛ばし、以後処理を始めて短縮化しています。
(3) 「Processing Options」では左側のConvert Colour To Monochromeは「レ」チェックは外します(カラーのまま)。右側ではStabilisation関連はデフォルトのまま。右中央にあるCenter Object In Each Frameは太陽のセンタリング化ですので必ず「レ」チェック有りを確認しておきます。
Croppingではこの段階では画像サイズはわからないのでEnable Croppingの「レ」チェックは無しにします。Frame Resize(Reduce)は好みで選択しても良いのですが、4Kサイズのままが良いとしましたのでResize Framesは「レ」チェックは無しのままにしました。
(4) 「Quality Options」ではQuality EstimationのEnable Quality Estimationの「レ」チェックは無しにします。有りにすると品質順にフレームが並び替えられてしまい映像も何が映っているかわからなくなってしまいます。
(5) 「Output Options」では左側のOutput FormatをAVIを選択し、右側のAVI File Optionsでは(MPEG-4 Lossy Compression)を選択しました。Use Same Framerate As Input Video If Possibleは「レ」チェックを有りにし、原動画と同じにしました。
(6) 「Do Processing」で左側のControlでStart Processinボタンをクリックすれば新たな動画ファイルが出来上がります。読み込んだフォルダー内に出力されます。その動画を以下に示します。動画サイズは表示用として変更しています(処理は4Kで実行)。
原動画の14秒間の映像が3秒間になり、かつ太陽はセンタリングされました。最初に示した原動画では太陽が右上に移動していますが、それが無くなります。
2.2 比較暗処理画像の取得
方法2.1の段階で、(5) 「Output Options」ではOutput FormatをAVIを選択しましたが、TIFF画像を選択すればISSが通過している前後を含めた100フレーム(200~300フレーム目)が得られます。または、2.1の段階で作成した3秒間動画Fileをインプットして同じ操作をすれば同じ100フレームが得られます。センタリング動画が不要な場合は前者の処理にすれば短時間で済みます。
これらの全フレームを使用してSiriusComp64で比較暗処理した画像は以下のとおりです。画像サイズは4Kのままです。ISSが映っているフレームのみを抽出して処理しても同じような画像は得られます。
3. 参考用(太陽面縦断から太陽面横断に変換)
原動画は上から下にISSが通過する映像なのですが、太陽面横断にしたい場合もあるでしょう。動画のみを取得したい場合はPIPPでもSiriusComp64のどちらでも処理が可能です。PIPPの場合は「Processing Options」の左下にあるFlip And Rotateで選択します。反転はしませんので「レ」チェックせずにRotate 90 Degrees Anticlockwiseを選択しました。
そのセンタリング映像を以下に示します。
比較暗処理画像は2.2項と同様にして処理すれば下記の写真が得られます。回転していますので縦長になりました。