1. はじめに
先日No.743でひまわり8号による火星と月の画像を示しましたが、実は2020/09/06 14:00および14:50のひまわり8号の画像に月と火星が写ることを期待していたのです。しかし、結果は実りませんでした。国内では火星が月と接近する情報は流れていましたが、火星食は見られません、見るとしたら地球の反対側ブラジル近くの大西洋赤道上からです。これはひまわり8号から見ていることと対応しています。
結果が伴わない場合、その情報は没にしてしまいますが、以前特集、参考記事の「気象衛星ひまわり8号から観える天体 (月の画像抽出)」でも引用しましたほんのり光房のオーナー様と初めての接触もあり、ご教示、共有情報の経緯もありましたので、ここではどのようなことを楽しみにしていたかを記録にとどめることにしました。
ひまわり8号は気象観測衛星ですので地球を観測することが目的です、たまたま地球の外側の宇宙空間スペースに天体が写ることがあります。今回、月と火星が接近し、地球の後ろに月と火星が同時にしかも重なって見える珍しい画像が得られることを密かに期待しました。
結果は、地球に隠れる直前の火星が写っていたものの月はマスキングにより写らず、50分後の地球から出る際は月のみで火星は地球に隠されて写っていませんでした。ひまわり8号の地球全体画像はスキャンタイムから10分間隔で更新されています、天体が地球の裏側及び外周のマスク領域に隠れなければ写る可能性がありますが、10分間隔の少ない画像にヒットする必要があります。
今回の事象をステラナビゲータ11でシミュレーションすると火星食が終わった直後(13:58:18で月の陰から火星全体が再登場します)、ひまわり8号の14:00の画像に見える可能性がありました。
ひまわり8号は地球の後ろに月が隠れて、月の後ろに火星が隠れるといった3天体食の経過を見ていたことになります。これは偶然にしてどの程度の頻度で起こるのでしょうか、想像しただけで楽しくなり期待していましたが条件がわずかにズレ実りませんでした。
以下に「情報通信研究機構(NICT)」のひまわり8号による画像、ステラナビゲータ11による画像と合わせて整理します。
2. ひまわり8号による画像とステラナビゲータ11の画像
図1に2020/09/06 14:00と同日14:50の画像を比較明合成した結果を示します。また、図2にステラナビゲータ11による作画とフリーハンドで合成した画像を示します(地球像は14:00時を採用)。但し、どちらもファイル容量が大きいので画像は1/10程度にリサイズ縮小しています。元の地球画像(11,000X11,000ピクセル)は下記にリンクしておきます。ファイル容量は139MBと124MBと大きいのでDLする場合は注意が必要です。
上図のとおり、該当時刻には地球の左側と右側に月と火星が位置していました。ひまわり8号の画像は地球の明るさに最適化されていますので、地球外に天体が写っていたとしても暗くそのままでは確認が困難です。この部分の狭い範囲を切り出して、強烈な明度等を調整したのが図3です。11,000×700ですので拡大すれば天体は見えますが、その部分を拡大して図4及び図5に示します。図4は月の陰から出てきた直後の火星です。ステラナビゲータ11による同時刻の画像を図6に示します。図6のような画像を期待したのですが、火星は写っているものの月が見当たりません。残念ながらマスキング領域に入ってしまったようです。図5の方も月が見えているものの月の影の境界を示し、かつスキャンニング時の時間ズレか不連続な妙な形をしていて、火星はタイミングが少しずれて地球の裏側に入っていたと想定され写りませんでした。
もし当日ひまわり8号が目をそらして11:30から14:30まで見ていたら図7が確認できたはずです(図7はステラナビゲータ11で中央固定にして作画していますので見え方が異なりますが月と火星の位置関係は同じです)。撮影スキャニング範囲がもう少し広ければ、月の後ろから火星が消えたり登場する前後は見られたかもです。気象衛星の使命ですからそんなことは二の次で今回は台風10号の方が重要です。
3.まとめ
残念でしたが期待した結果は得られませんでした、でも予想を確認している間は楽しませていただきました。結果は仕方がないと諦められます。しかし、このチャンスは実現しないように思ってしまいますがまた来るのでしょうか、と。
あらためて台風10号のこちら関東首都圏への影響は今のところ見られませんでしたが、沖縄、九州、四国、中国地方他の被害会われた方にはお見舞い申し上げます。