1. 概要
今月初めの撮影記録になってしまいますが、本記事の内容はSeestarによりISSの太陽面および月面通過以外で恒星や惑星接近通過時のISS拡大撮影が可能かどうかを考察したものです。結論として現時点では、無理と判断しました。もし、撮影例が現れた場合は再検討することとします。以下、その結論に至る過程を記しておきます。
2. 拡大撮影の挑戦(経過)
SeestarでISSの拡大撮影として太陽面通過時や月面通過時の撮影例を目にしたことがありました。そのような機会は遠出しない限り滅多に遭遇しませんので、ならば、明るい恒星に接近通過する時を狙えば撮れると思い込んでいました。これが大きな勘違いだったと知ることになるのですが、あまりに安易に考えていたと少し反省。
2024/10/02夕方、ISSが現地で最高高度約55°、最短距離493kmの通過。さらにへびつかい座の恒星ラスアルハゲに接近通過すると予想されましたので、Seestarでその恒星を写野に入れて通過するISSの拡大撮影を試みました。なお、通過時のラスアルハゲ(Rasalhague HIP86032 光度 2.08等)またはISSの高度は54°でした。
Seestarの焦点距離は250mm(1,750mm相当)、太陽や月のフル画像がアプリ画面一杯(1080×1920)に表示(撮影)される画角で黒点等は写ります。また、実際にISSの太陽面通過や月面通過の撮影例をネットで何度か目にしたことがあり、ISSが形として写っていましたので、恒星を画角内に導入さえできればISSの画像は小さくてもそれらしい姿として写ると予想しました。
ところが、その思惑は失敗、撮影後で考えてみると当然のこと、シャッター速度があまりに遅かったのです。今回の恒星や惑星接近通過時の撮影では太陽面および月面通過時のような適切な撮影条件・高速シャッターにならなかったためと考えられます。恒星撮影に合わせた条件が自動に設定され、この条件のままISS通過時も撮影されるので極端に遅いシャッター速度で撮られてしまいました。Seestarでは高速撮影時のシャッター速度の制御、設定はできません。
当日の撮影の流れを詳しくまとめておきます。今後、もし、成功例があった場合、または設定変更等が可能になった時、具体的な手法にする検討材料になるはずです。
(1) Seestarでレベル、コンパスキャリブレーション確認後、恒星ラスアルハゲを自動導入。
(2) ラスアルハゲの光点がスマホアプリ画面内に見えていましたので明るさを調整(この調整がSeestar本体によるシャッター速度決定に影響しているかは確認できません)。
(3) 試しに撮影。撮影は星団・星雲モードです。10秒間×6枚のスタック画像、これを画像1に示します。最も明るく写っているのが恒星ラスアルハゲです。
画像1 ISSが接近通過すると予想された恒星ラスアルハゲ Seestarによる10秒×6枚ライブスタック
(4) 今回、ISSはアプリ表示の画角内(太陽を横切るので評価できます)を1秒間以下で通過するはずですのでSeestarの恒星撮影モード10秒間露光ではISSは線引き光跡撮影になってしまいます。このため1/数百秒~1/1000秒台と高速シャッターを選択したいのですがその機能はありません、どの撮影モードを選択してもシャッター速度の設定はできません、仕方なく画面上に恒星がモニターできる惑星モードに設定しました(この後、景色モードにしても速いシャッターに相当する撮影にはなりませんでした)。
(5) 北西の空に目を向け、ISSがこちらに向かってくる様子を眺めながら(ISS光点の移動を眺めていたのは久しぶり。いつもはファインダーばかりです)、恒星に近づく10秒ほど前にビデオモードで録画開始。画面内を見ていて、通過は確認できましたが線状に写ってしまったとすぐにわかりました。
(6) このビデオファイルから、通過した部分を取り出して動画1に示します。ISSは線状に写っています。動画のフレームレートを確認すると5fpsで撮影されていました、合計5フレームにISSが写っていましたので、1/5秒程度の遅いシャッター速度になっていたのでしょう。これではISSの姿を写すことはできません。
動画1 ISSの拡大撮影(光跡になってしまいました) 2024/10/02 18:33:35 Seestar
3. Seestarの仕様特性からの考察
太陽面通過の場合は、太陽撮影モードにした段階で適切な撮影条件になっているので(1/数百秒よりも速い高速シャッターのはず)、その条件下でISSを撮影すれば姿として捉えられます。月面通過の際も同様に速いシャッター速度で撮れるはずです。これがネットで見られたSeestarによる拡大撮影だと思われます。(本検討内容と直接関係ないのですが参考のためフレームレートを過去にわたって調べたのですが、太陽や月の場合、×1では28~30fps、×2拡大では倍の50fps、×4倍では100fpsになっていました。恒星、惑星の撮影では5fps~11fpsでした。また、明るさによっては変化するようです)。
上記撮影手順の例のように恒星や惑星モードの撮影ではそのようなシャッター速度にはできず、被写体は流れてしまいます。現実のシャッター速度はわかりません。太陽面や月面の撮影の場合はたまたまISSも捉えられる撮影条件に合致していただけのことと考えられます。
このため、高速シャッターに設定できれば良いのですができません、また太陽、月の撮影モードに選択してシャッター速度がそのまま固定されれば映せると思いますが、現時点ではその選択もできません。
デジタルカメラではマニュアル動画撮影にすれば、シャッター速度は速くしても30fpsまたは60fpsで撮影できますので、良く見られる、フレーム毎に進んだ位置として撮影できます。
4. 結果
以上、SeestarによるISS拡大撮影はたまたま太陽面や月面通過時の場合は適切なシャッター速度になって可能となるが、それ以外はできないことになります。Seestarの仕様では読み取れない特性ですので個人的な理解が正しいとは言えません、もし今後、太陽面、月面通過以外の時にISS拡大撮影の成功例が出てくれば上述したように再度検討し理解を深めたいと思います。