No.1150の記事に触れましたようにISSの天頂通過時にカーゴドラゴンがランデブー。ISSを追いかけるドラゴンの様子を動画で撮影された方も多くネットで楽しませていただきました。眼視で見えていたとの報告が多いので、目撃しなかった者として拡大撮影よりもそちらに力を入れるべきだったかとの想いも。とは言え、過ぎてしまったことは仕方がなく、それでも未練が残り、拡大撮影の映像の中に写っていないかと調べてしまいました。焦点距離3,000mm相当の映像で手持ち撮影であることに注意。
その結果を以下に示します。
(1)ランデブーの画像
画像1は拡大撮影の動画から取り出したランデブーの様子?を示します。撮影時刻は18:57ですのでNo.1150の夜空の画像から北東へくだり、見かけ上、高度もかなり低くなっています。左が元フレーム、右がかなり明度を上げた場合のフレームです。ドラゴン?疑問符を付けたのはISSは姿、形から判別できますが白く光る点はドラゴンかわからないためです。後述するように自身ではドラゴンに違いないと考えましたが、天体情報が無く決定的な証拠を示せないからです。参考にドラゴンの形がどのように写るか最近の例としてNo.1133を示します。撮影は同じ条件でこの画像ではほぼ天頂付近で距離も近いため大きい点状に見えるのですが、遠ざかれば画像1のようにさらに小さな点状にしか写りません。従って、点像のみの判別は難しい。
画像1 ISSと並走するドラゴン? 2023/03/16 18h56m53 at YOKOHAMA ファイル撮影時情報から計算
ステラナビゲータでドラゴン(CRS-27 Cargo Dragon)とISSの位置関係は表示できるのですが、撮影結果と微妙にずれていたのも断定していない一つの理由です。ドッキング前で軌道が刻々と変化する時間帯ですのでその影響が考えられます。ISSとドラゴンの位置関係の情報は現時点、これ以上はわかりません。
(2)画像の選定とドラゴンかどうかの確認
4K映像を見ていると北東へ遠ざかりつつある時にISSの後ろに白い点が見えました。このためそのままのサイズでフレームを取出し、明るさを調整後、ISS基準でPIPP処理しISSと白く光る点の両方が写るフレームを選び出しました。処理の際はISSが画角内の下端に固定しその上側に白い点が写るフレームを拾い易いようにしました。天頂付近ではISSと白い点が同時に写っている画像は無く(離れすぎて画角内に入らないためです)、かなり天頂から遠ざかった時点になりました。また、撮影目的がISSを画面中央に捉えようとしていますし、これだけの拡大撮影になると手動捕捉のため画角内一杯に飛び廻りますので両方が写るフレームはかなり少なくなります。
ISSの後ろに続く白い点が写っているフレームのみを選び、ISSを固定し光る点との相対位置関係をアニメ化しました。それをアニメ1に示します。時刻経過順に表示しています。ISSの進行方向は下です。暗いので見ずらいかもしれませんが映像上側の白い点がふらつきながらISSとの間隔を時間の経過と共に見かけ上縮まるように写っています。ISSの大きさも最初に比べて後半は遠ざかりますので小さく見えます。
アニメ1 ISSとドラゴン?(光る点)の相対位置関係の変化
このアニメの全フレームを比較明処理しトリミング、さらに写っている白い点をグループ分けし、その時刻および高度を付記しました。時刻は撮影ファイルからのデータ、高度はその時刻におけるステラナビゲータ12によります。これを画像2に示します。ISSとの位置関係にふらつきが見られますが、前述したとおり撮影画角内を隅々にばらついて撮影されるため、言い換えるとカメラの微妙な画角、回転ズレによるためと考えられます。なお、画像2の縦サイズは画角範囲のままです。
画像2 ISSとドラゴン? 左:ISSの位置を基準にして比較明処理(白い点がドラゴン?) 右:ドラゴン?の写りを分類
グループ分けすると見事に光る点は時間の経過と共にISSに見かけ上近づいているように見えます。これは撮影地点から30秒も経過し、高度は35°から25°と変化、距離も測心でグループ1に比べてグループ4では200kmも遠ざかり、ISSとドラゴン?の離角は小さくなると考えられます。恒星の点とは考えられませんし、カメラによる影響も考えられないことからこの白い点はドラゴン?。
画像3にアイキャッチ画像にも使用した一枚の画像を示します。画像1とほぼ同じです。
本記事全体にドラゴン?疑問符が取れませんでしたが、このような画像整理の試みも初めてで、ランデブーが見えたとの情報によるところが大です、楽しい整理になりました。
もし、ランデブーや後追い天体を撮影するのならば、このような拡大撮影ではなく、固定撮影か、低倍率の撮影の方が良いのでしょう。
これ以上の考察は止めます、静止画でなくてISSとドラゴンの動画の方が臨場感が味わえます。それよりも空を見上げて、目で直接見る方が記憶に残ります。私は残らなかった、もうそんなチャンスは無いかも…..。
画像3 ISSとドラゴン?