1. はじめに

BENROの電動三脚ヘッドPOLARIS(Astro Edition版)を入手しました。クラウドファンディング(Kickstarter)に支援参加してから1年以上経過、商品化計画プランが大幅にずれ込みましたが時間をかけた分それなりの商品に仕上げられていました。POLARISの機能はいろいろありますが、ここでは天体撮影機能に関して触れることにします。

POLARISは赤道儀の極軸合わせが不要で、天体の導入から追尾までが三軸の回転制御で行われます。三脚にPOLARISを載せ、光学機器を取り付け、レベラーで水平性を確認すれば以後は方位に関係なくコンパスのキャリブレーション → スター・アライメント → トラッキング開始 → 撮影開始へと進められます。(自身の経験上ではAZ-GTiの使用方法に似ています?)

POLARISと互換性のあるカメラ(対応機種は少なくない)であればそれを本体設置後、スマホまたはタブレットに被写体(天体)が映し出されアライメントの調整制御が可能になります。互換性のないカメラや望遠鏡でも手動で対象天体を写野中央に設定できれば通常の赤道儀の使用方法と変わりがありません。

使用方法には少し慣れたものの、使いこなすにはまだ先です。最初に星雲等を例にして試写しようと思いましたが、この時期の夜の時間帯では興味の対象となる天体が現れないので昼間の太陽を利用して追尾性能がどの程度か知ることにしました。その日は月齢26.3と金星の接近でしたが雲で撮影は断念、一方、太陽は見えていましたのでNDフィルターを付けて追尾性能の確認を実行しました。

結果を以下に示します。あわせて撮影開始までのPOLARISの操作、設定手順で戸惑った経緯もありましたので第3項にまとめておきます。(追記。天リフ様から2022/06/30付で「新時代のスマート雲台・BENRO Polarisレビュー」として詳しくまとめられています。ある程度使い方を体験してから読みましたのでとても参考になる情報がいっぱい、なるほどと知ることがたくさん。現時点公開されている関連記事では最もベストなレビュー記事と思いました)

後日、夜のバージョンで再度確認したい(追記。恒星を対象にNo.1040に一つの例を示しました)

2. 太陽を利用した追尾性能確認

今回は、太陽を対象として導入及び追尾性能を確認しました。カメラはCOOLPIX P1000を利用。星雲、星団の長時間露光を想定して400mm相当の焦点距離、それに月や惑星などを想定して2,000mm及び3,000mm×3.6=10,800mm相当の焦点距離の3種類のパラメータサーベイとしました。全体の構成を画像1に示します。

画像1 POLARIS + Astro Expansion Kit + 微動雲台 + COOLPIX P1000 + リモコンシャッター

(焦点距離400mm相当の撮影)

最初にPOLARISによるTracking ONの状態にして5秒間隔で:計69枚、340秒間の静止画を撮影、続けてTraking OFFにして66枚、325秒間撮影、これらをそれぞれ約9秒間の動画にしました。動画1に結果を示します。前半の部分はTracking ON状態、途中ブラック画像を挟んで後半はOFF状態で撮影したものです。映像がチラチラしていますが太陽の前面に薄い雲が流れていたためでした。Tracking ONの状態では太陽はずれず5分以上経過しても定位置に写っており確実に追跡しています。この結果からPIPPやAS!3の処理アプリを併用すれば長時間露光の星雲等の撮影も可能かと想像されます。

動画1 POLARISの追尾性能の確認 焦点距離400mm相当 前半はTracking ON、後半はOFF 撮影はCOOLPIX P1000 どちらも追跡時間は5分以上

(2,000mm相当の撮影)

動画2にPOLARISのトラッキングONと動画3にOFFの映像を示します。どちらも約60秒間4K動画で撮影しました。それらの映像の中から15フレーム間隔(1秒間あたり30コマの中から2コマを選択)で120コマを選び出し約10秒間の最に再映像化したものです。フレームの大きさはファイル容量の観点から3,840×2160サイズから640×360サイズに縮小しています。動画3に対して動画2は60秒間経過しても最初の撮影範囲から外れません。この結果から今までのマニュアルつまみ廻しの追尾方法から逃れられそう。揺れているのは当日の強い風のためです。

動画2 POLARISトラッキング・オンの追尾性能の確認 焦点距離2,000mm相当 COOLPIX P1000による 約60秒間の追跡を9秒間で表示

動画3 POLARISトラッキング・オフ 焦点距離2,000mm相当 COOLPIX P1000による 約60秒間の追跡を9秒間で表示

(10,800mm相当の確認)

動画4にPOLARISのトラッキングONと動画5にOFFの映像を示します。動画処理が乱れていますが10,800mmの超拡大でもずれないことが確認できます。動画4は60秒間の映像を動画2及び動画3のように0.5秒間隔で取り出したフレームを9秒の映像にしたもの、但し動画5は14秒間の映像を0.5秒間隔で取り出したフレームを2秒の映像にしたものです。今までの経験からこの焦点距離では十数秒間で写野から外れることが予想されていました。

動画4  POLARISトラッキング・オンの追尾性能の確認 焦点距離10,800mm相当 COOLPIX P1000による 約60秒間の追跡を9秒間で表示

動画5  POLARISトラッキング・オフ 焦点距離10,800mm相当 COOLPIX P1000による 14秒間の追跡を2秒間で表示

3. 参考 : POLARISの設定手順について

マニュアルは公開されていますがそれだけでは理解できないところもあります。補足してネットで”BENRO POLARIS”と検索し参考になったリンク先を以下に示します。いずれも動画です。
Benro Polaris Forumから
Benro Polarisによる第3軸の取り付け – YouTube

以下、POLARISによる撮影開始直前までの操作、要領を補足しておきます。

・ POLARIS本体のハード取扱はマニュアルどおり。POLARIS (benro-polaris.com)

・ Astro Expansion Kit(Astro Module)の取付は上記動画のとおり。

・ 電源オンは単純なプッシュではなく、ダブルプッシュして離すスタイル、注意したいのは撮影終了後、電源ボタンの操作により本体がコンパクトな状態に戻るのですが三脚の支持架台によってはそれと干渉する場合がありますので注意要。

・ 携帯電話(ここではiPhoneでiOSアプリPolaris)とPOLARIS本体をBluetoothとWi-Fiで接続後、画面上に現れる左右のジョイスティックを指でそれぞれダブルタップすると本体の2軸が回転しAstro Module(網目構造の部分)が水平になります。この段階でiPhoneを載せて水準器(フリーのiOSアプリ)で水平化が確認できます。ずれていれば三脚側で調整。

・ レベルを確認後コンパスのキャリブレーションを実行します。POLARIS本体のサイド面にiPhoneを当ててキャリブレーションボタンをタップします。この時不慣れな事もあってiPhoneの向ける方向をミスしてしまうのですが正しくはカメラ取付方向側(カメラの後方)に向けます。反対側に向けてキャリブレーションしてしまうと続く星のアライメント確認時に導入したい天体と180°反対方向に向いてしまいます。

・ 以上で水平性、コンパスが整ったので次は天体によるアライメントです。Astroモードで天体(目で見える天体が相応しい)を選択するとPOLARISは自動的にその方向に向けられます。しかし、カメラの取付誤差からかなり大きな焦点距離にすると光軸とずれる場合がほとんどです。このずれをジョイスティックで通常速度、微動でまたは本体の軸ハンドル部分(超微動補正)を手動で回転させて調整しますが、微動雲台を途中に組み入れてそれで調整しても良いでしょう。Polarisのジョイスティックによるアライメント操作によりカメラ取付角度等の誤差が解消され”Confirm”をタップした瞬間にカメラの向きに対応した正確な座標(方位、高度)に補正されるようです?。

・ これでPOLARISは空のどの位置にある天体も赤道儀並みに追尾します。以後、他の天体を選び写野に導入すれば観測または撮影に専念するだけです。現実的にはそれでもカメラの重心や接続補助器具等の微妙なバランスで写野内でわずかにずれる場合もあり(ガッチリ固定させてしていれば良いのですが)、仕方なく微動雲台を使用している場合は承知の上で調整します。

以上、簡単ですが個人的な主要な注意点をまとめました。

以後、使用方法についてはその都度まとめようと思いますが最終的には特集、参考記事にしようと考えています。