No.755に続くシリーズです。今回はISSの4K動画を利用した例です。地上から望遠レンズで手持ち撮影した映像(動画)はそのままでは見られたものではありません。あまりの拡大率のために連続追尾は難しく、また、わずかなブレでフレームから外れたりするからです。
解決方法としてハード面では滑らかにISSを追尾できる装置が考えられますが持ち合わせていません、カメラを頑丈な器具でサポートし武器を身に着けたようなスタイルで撮影する方法や三脚のような固定架台に載せてさらに追尾しやすいように工夫して映像の品質を高めている方法も見受けられますが望遠鏡ではありませんので採用には至っていません。
動画からのスタック処理画像やフレーム(写真、静止画)の取出しは特に支障はありません。ここではブレている原動画からISSらしい姿を中央にした映像に作り替えることが目的です。
ISSの映っている部分だけを取り出してしかも画面中央にする動画編集は手間を要します。当初はAutoStakkert!3を利用してフレームを取り出し、SiriusCompで動画を作成していました。しかしながらAutoStakkert!3ではセンタリングされたスタック画像を取り出すまではカラーですが各フレームを取り出す処理(時間順)では白黒画像になってしまいます。
最近になって、カラーのまま、センタリング、しかもクロップして動画にできる方法を知りました。それがPIPPです。今までの方法が何だったのだろうと思うぐらい容易に短時間で作成できます。
PIPPによる天体動画処理の例(1)に続き、(2)としてISSの動画ファイルからセンタリング動画が得られるまでの流れを記録します。COOLPIX P1000で撮影されたISSの拡大撮影、4K動画の例です。なお、この記事は特集、参考記事の「天体を画面中心に固定映像化(動画)する方法」からでも引用できるようにしています。
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(備考)
No.755と同じ文章ですが記載しておきました。
ここでは主にPIPPの処理手順を記録したメモのようなものです。公式的なPIPPのマニュアル(http://docs.sakuraweb.com/PIPPmanual_JP-web/manual)が公開されていますのでそちらを利用すると良いでしょう。スタック処理プログラムばかり利用していてPIPPは最近教えていただきました(参考記事の方で経緯を少し触れています)。スタック処理に慣れていれば尚更PIPPが驚くほど高速化できて、かつ応用範囲が広がるアプリケーションと感じるはずです。
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1. 原動画ファイル
COOLPIX P1000で2020/08/06 19:01に撮影したISSの4K動画の抜粋です。ここで示す動画は説明表示用としてサイズを小さくしていますが、処理は元の3840×2160のオリジナルサイズのまま実行しています。
焦点距離は35mm換算で3,000mmですので連続して追尾することは難しいものです。写野に1秒間でも留まれば3840×2160の大き目のサイズで30フレーム(静止画像)が得られますが、シャッタースピードが1/800秒でさえ、ブレには勝てず尾を引いたりして取得したいフレーム枚数は少なくなります。
映像は光る点のようなものが動き回っています、それがISSです。再生を一時停止(4秒~5秒時が確認しやすい)すると判別できます。これを撮るのはとても面白いです。慣れも必要です。小さいと思われるでしょうけれど、経験からこんなに大きく撮れたのでキレイな画像が得られると確信する瞬間なのです((o^―^o)ニコ)。
2. PIPP前処理によるISSセンタリング映像の取得
原動画ファイルから、ISSをセンター化させた映像を取得することを目的とします。処理の流れを以下に示します。
PIPPに原動画ファイル読み込ませた後、以下の手順で進めます。スクリーンショットは載せていませんがPIPPを起動して比べると良いでしょう。
(1) 「Source Files」では右下にあるISSに「レ」チェックします。(これが素晴らしい。ISSを選択できることに驚きます)
(2) 「Input Options」は素通り(右側のInput Frame Colour/MonochromeではAutoDetectかColourを選択。デフォルトはAutoDetectになっているはずです)でも良いのですが白黒画面には苦労してきた身としてColourを選んでしまう場合が多いです。
(3) 「Processing Options」では左側のConvert Colour To Monochromeは「レ」チェックは無しです(カラーのまま)。右側ではStabilisation関連はデフォルトのまま。
Object Detectionの設定は熟知できていませんがとても良い機能です。Enable Object Detection(Rejects Frames Without Object)とAuto Object DetectionとAuto Object Detection Thresholdは「レ」チェック有りです。あとで触れることになりますが、簡単に記述するとObject Detection ParameterおよびObject Detection Threshold(1to255)の数値によりISSが写っているフレームの取捨選択に影響します。ラフすぎると肝心なISSの写っているフレームが捨て去られ拾えない、敏感しすぎるとブラックフレームまで拾ってしまうと言うことです。この設定の最適値はデフォルト以外に少し慣れると良いでしょう。
右中央にあるCenter Object In Each FrameはISSのセンタリング化ですので必ず「レ」チェック有りです。
Croppingでは今回はデフォルトのまま、300×300としました。
Frame Resize(reduce)ではResize Framesは「レ」無しにしています。クロップ範囲を大きくして縮小するときれいな場合もあります。なんでも大きいものが良いとは限りません、理屈的にはISSに近づく宇宙船からの写真の方が大きく写せますので。好みによります。
(4) 「Output Options」では左側のOutput FormatをAVIを選択し、右側のAVI File Optionsでは(MPEG-4 Lossy Compression)を選択しました。Use Same Framerate As Input Video If Possibleは「レ」チェックを外して10Framerate(1/3倍速)にしました。映っているフレーム数が減少すると予想したからです。
(5) 「Do Processing」で左側のControlでStart Processinボタンをクリックすれば新たな動画ファイルが出来上がります。読み込んだフォルダー内に出力されます。その動画を以下に示します。動画サイズは表示用として変更しています。
ここで、上記動画では取得されたフレームが多いので滑らかな映像に見えますが、逆にブレた画面や真っ黒な画面が途中に入り込んでいて見にくくなっています。これは上記(3)で記述した理由によるものです。何度か(3)の設定数値を変えると見えやすい映像に近づきました。今回はこの取捨選択に関連した数値を変えずに上記(4)に戻り、AVIではなくてTIFFを選択してフレーム画像を確認してみることにしました。TIFF選択以外は全てデフォルトのままです。
上記(5)に移って実行すると取得されたフレームのTIFF画像ファイルがアウトプットされます。フレームには上記動画から類推されるようにブレやブラックが混ざっています。動画にしたいものだけを残して再度動画を作成することにします。
3. TIFF画像から動画を作成
前2.項に示した状態では一度、FileメニューでRemove All Filesをクリックし原動画ファイルを消して、Source Files にTIFFファイル全部を読み込ませます。Filenameが順番通り(経時順)に並んでいるか確認して、Output OptionsでAVIを選択し、Do ProcessingでStart Processingをクリックすれば再度動画が作成されます。このようにして得られた動画を以下に示します。
少しは見やすくなったのではと思います。見にくくても原画像に近い方が良いと思われる方もいらっしゃるでしょう。それぞれの好みで編集すれば良いと思います。なお、ISSをもっと大きくしたセンタリング映像は特集、参考記事の「HTV-9(こうのとり)シリーズ最終号機 地上からの拡大映像の記録 2020/08/06」にこの方法で作成した動画を載せています。