皆既月食の日は天候に恵まれました。それに442年ぶりに月食中の惑星掩蔽と話題になっていましたので楽しみが倍増。今回の撮影では今までの経験をとおし以下に着目しました。(過去の月食記録の記事は特集、参考記事の欄に載せています)

a. 月食時の天王星掩蔽の潜入、出現時の様子

b. 通常の皆既月食の過程、可能であれば月面の影を利用して地球の影を表現したい。

c. ターコイズフリンジの様子は如何か

a.及びc.の撮影は電動架台BENRO POLARISにCOOLPIX P1000を載せ、b.に関してはポータブル赤道儀ポラリエとEOS-M6、200mmレンズで撮影することにしました。どちらも設定の甘さからか約2時間半の間に数回写野微調整しましたが、追跡を大きく外すことは無く撮影に専念できました。POLARISはリキャリブレーション、リアライメントはせず微動雲台併用で乗り切れました。一言で言えば楽でした。今の時代、モーター等高精度技術で追跡が望まれますが私のように天体を捕捉できている限り、星雲、星団でないので問題はありません。さらに編集ソフトがありますのでそれとあわせれば画像整理が可能です。

既にたくさんの月食、天王星掩蔽の美しい写真が公開されています。当方は話題の進行にはついて行けず、どうしてもデータ処理に時間を要してしまいだいぶ先行陣から遅れてしまいました。データ処理の半分が済んだというところでしょうか。データ処理しながら編集アイデアが生まれるのも楽しみです。

以下、本記事ではP1000によるデータについてまとめます。

1. 皆既月食時の天王星掩蔽の記録

皆既月食中の天王星掩蔽のように惑星食が見られるのは1580年以来442年ぶりです。次回は322年後の2344年の土星食と予想されています。これを見逃すわけにはいかないと第一優先に天王星の潜入、出現を確認しました。拡大率は抑えて世紀の天体ショーですので月全体が見えて天王星が消える、および現れる場面にしようと決めました。参考に今までの掩蔽撮影例を示します。本ページ内の検索欄に掩蔽と入力すると見られます。恒星や最近では金星の掩蔽があげられますが、月食時の惑星掩蔽が今回の大きな特徴です。

ステラナビゲータ11による月食及び天王星掩蔽の時刻は以下のとおりです。観測地点は横浜。

月食
17:02 半影開始
18:09 本影開始
19:17 皆既開始
19:59 食の最大
20:42 皆既終了
21:49 本影終了
22:56 半影終了

天王星掩蔽
潜入
20:41 第一接触
20:41 第二接触
21:01 食の最大
出現
21:22 第三接触
21:22 第四接触

画像1および画像2に天王星掩蔽の様子を複数枚の撮影画像を重ねて表示します。どちらもAstroArtsのギャラリーに載せた写真#1#2です。天王星は撮影画像では写っていますが5.6等級で直接自分の目では見えません。

ふと思ったことですが、掩蔽時に惑星や恒星が月に近づき隠れてしまうのを当然のように受け入れてしまうのですが、逆にその方があれっ、と思ってしまうのはたぶん私だけなのでしょう。地球の自転にあわせて見かけ上恒星や惑星が月と一緒になぜ動かないだろうと。赤道儀等で月を中心にして追跡撮影していると恒星や惑星が相対的に動きます。逆に恒星や惑星を赤道儀で追跡し写野中心にすると月がずれてしまいます、面白くないですか?。って、基本的な事でしたね。

(天王星潜入)

天王星が潜入するまで15枚をほぼ1分間隔でリモコン自動撮影しているのですが、途中、ぶれ等もあって13枚で比較明処理しています。撮影時刻は20:26:33~20:40:47。インターバルを60秒、撮影を1秒に設定してしまいましたので、実際の撮影間隔は1分1秒です。潜入時に画像1に写っていた月と接触しているように見える画像撮影時刻は20:40:47で、この後は手動でシャッターを押し続けました。写っていたのは20:40:51、消えたのは20:40:55ですのでその4秒間に潜入(第2接触)したことになります。まあ、時刻の誤差はほとんどないと思いますが横浜では20:41で潜入としてシミュレーターとあっています。20:40:47時点の天王星が月と接触している画像からトリミングして3倍に拡大した画像を右下にペーストしています。

画像1 皆既食中の天王星掩蔽 潜入 2022/11/08 COOLPIX P1000 ISO-400 f/6.3 359mm(2,000mm相当) 1秒 13枚の比較明画像

(天王星出現)

潜入後、20:42には皆既食終了ですのでその様子を捉えた後、しばらくは手動でいろいろ撮影。出現と予想される時刻の数分前から撮影を開始しました。天王星が写っていない画像の時刻は21:20:59で写っていたのが21:22:00です。ステラナビゲータ11のシミュレーション画像を見ていると第三接触が21:20:58と判断できますが画像にはまだ写っていません。横浜でも場所によって数秒の差がありますのでその影響も考えられます。第4接触は21:22:00に写っていますのでここでは出現を21:22とします。

画像1と同様に21:22:00~21:35:13までの1分1秒間隔で撮影した9枚(ぶれ等の画像は不採用)を比較明処理し画像2に示しました。右上に21:22:00時点の3倍に拡大した天王星をペーストしています。月食本影終了が近づいていますので比較明処理で天王星が消えてしまいますのでその直前までの9枚としました。月面の様子はその9枚目の画像が支配的になっています。

画像2 皆既食中の天王星掩蔽 出現 2022/11/08 COOLPIX P1000 ISO-400 f/6.3 359mm(2,000mm相当) 1/2秒(一部3/10秒) 9枚の比較明画像

また、潜入、出現に近い時刻の変化をアニメGIFにして画像3に示します。潜入時は20:38:45, 20:40:47, 20:40:51,20:40:55、出現時は21:20:59, 21:22:00, 21:22:10, 21:22:26の撮影画像の組み合わせです。

画像3 天王星潜入及び出現のGIF画像

2. 皆既月食

皆既開始時、皆既最大および皆既終了時点の画像(上記に示した時刻とは少しずれます)を画像4に示します。月食時の色合いは眼視では赤黒い印象です。月の海がどうしても暗めになります。それでもカメラは明るく撮ろうとするほど鮮やかになります。三枚の内、中央の皆既食最大時のシャッター速度が4秒、他は2秒です。それ以外は共通でISO-400 f/6.3 359mm(2,000mm相当)。皆既食最大時のみやや暗く処理しています。他は原画(トリミングのみ)のままです。

大半は鮮やかな月面、現実的な目で見る月面と少しだけ違うようにも思います。個人的には鮮やかな画像の方が好みですが、もっと暗く見えてしまいます。自然にプラトー、虹の入江の他、真ん中のCの字、それにフンボルト海に目が行ってしまいます、ギリギリ写っていますね。

画像4 皆既月食2022/11/08の皆既食開始、最大(地球の影の中心に最も近い)、皆既食終了時の画像 COOLPIX P1000

皆既最大時の焦点距離500mmが鮮やかに写っていましたので画像5に示します。鮮やかさはカメラだからですので、眼視では私の目では薄赤黒い、暗い月でした。おひつじ座あたりの恒星が写ります。

画像5 皆既月食 2022/11/08 19:57 ほとんど食最大(地球の影の中心に最も近い位置に相当) COOLPIX P1000 ISO-400 f/6.3 500mm相当 4秒

3. ターコイズフリンジ

月食時、月面に写り出される地球の影の縁が地球成層圏オゾン層を通過した太陽光が月面でトルコ石風の青緑に見えると言われていて、だいぶ前のNo.359等でも触れてきていました。フリンジの色として当時からいろいろな例がありどれが本当の色か今でもわかりません。このため、必ず撮ったままの画像と少し青緑調に調整した画像の二枚を組み合わせて楽しんでいました。今回も探してもこれだっ、という画像は見つかっていません。参考になってしまいますが今回はリサイズ以外撮ったままの代表例を画像6に示します。明暗の境界が少し色が異なるかなと思える程度でした。

画像6 ターコイズ・フリンジが見えているかどうかの確認撮影