No.980に示した来年2022年の秤動図から、首振り・秤動の大きい月面がどのように変化するか興味を持ちました。首振り(以下:秤動)に伴う月の周辺観察とは別に、もっと素朴で月面全体の変化を見た目で一目瞭然にしたいのです。百聞は一見に如かずです。

この月面変化を撮影したく、一つの例をシミュレーションで取り上げました。結果は個人的にこんなにも月の顔(月面)が変わるものかと驚きました。しかし、三日月と上弦の例になってしまい、欠けた領域が広いため写真撮影で全体像の変化を示すことは難しそう。理想は満月の状態で秤動が大きく左右上下の正反対の月面を見ることです。しかし、No.980に示した測心秤動図を描いただけではタイミングどころか、チャンスの有無さえわかりません。

この想いを察していただき「ほんのり光房」(久保庭敦男)様からヒントをいただきました。天文年鑑2022にある秤動図のように月相と対応させると撮影のタイミングが計れます。さらに月相の年月日時刻のリストを提供していただき、これから上記測心秤動図と重ねて表示することにしました。

2022年の一年間のみですが測心秤動図(横浜)と月相を重ねます。得られた結果は図1のとおりです。薄い線は一年間の測心秤動です。天文年鑑2022のように月別には示しません。但し月相シンボルに年月日は付記しました。時刻は分以下が四捨五入されていますがこの図には示しません。シンボルは新月、上弦、満月および下弦の形にしています。秤動の変化は時間の進みに対し時計廻りですので、大きな変化がなければその年月日辺りに撮影タイミングの余裕、チャンスが生まれるかもしれません。正確を期すためには天文シミュレータで確認すると良いでしょう。

図1 2022年の月秤動図(測心:横浜)と月相

図1の秤動図にNo.980に示した月面比較に使用した月の最大秤動値を赤く、それに今回、一例として満月だけで選択した正反対同士の月の秤動値を橙色にして図2に示します。満月にこだわらなく、月の周辺等の変化を見極めたい場合は上弦、下弦の時、いやそれ以外の月相でも成り立ちます。これは天文年鑑のように月毎に表示するともっと詳細に把握できます。

図2 2022年の月秤動図(測心:横浜)と月相 秤動の大きな正反対の月同士→赤:最大秤動点、オレンジ:満月同士

それぞれ赤色、橙色ポイントを例にした測心秤動の計算値を拾い出すと以下のとおりです。時刻は日本標準時です。

赤ポイント(No.980に示した例)
右上(第一象限の赤い点) 2022/01/07 10:00   7.95°   7.33°
左下(第三象限の赤い点) 2022/06/07 23:00 −7.61° −5.42°

オレンジポイント(満月同士の比較例)
右上(第一象限のオレンジ点) 2022/09/10 19:00   4.98°   6.40°
左下(第三象限のオレンジ点) 2022/02/17 02:00 −4.88° −6.07°

満月を例にしたシミュレーション画像を図3に示します(拡大すると両月面に緑色のクロスが見えるのですが見かけの中心で、真の中心からのずれ、経度および緯度秤動値に相当します)。

赤い点の比較(図4にNo.980からコピーペースト)に比べると、百聞は一見に如かずとまでは行きませんが、それでも違いはわかります。欲張ると図4のような大きな秤動で欠けがある月ではなくて一目瞭然の写真が得られれば理想です、実現は不可能とも感じてしまいますが、それを夢見て、撮影を続けようと思います。

図3 2022年の満月同士で比較できる月面のシミュレーション画像

写真4 秤動の差による月面の差 Stellariumによる

図4 2022年の年間最大秤動(正反対同士の月)の月面比較