本題の前にISSの拡大撮影は今年はあと一回。早朝周回モードですとまだチャンスがありますが夕方周回モードは明日のみ。逃せば来年。今年は例年になくチャンスが少なかったように感じてしまいます。明日12/9は狙ってみますが逆光でこれまた運がない。名古屋以西では良いチャンス、新幹線で行ってみたい気持ち。

本日12/08はソユーズMS-20宇宙船で前澤友作さんら日本人2名がISSへ。日本時間で夕方に打上げられ地球4周6時間後にドッキング予定、半日で着いてしまう、ソユーズはいつもドッキングが早いです。出張みたいなスケジュール。


それでは本題目の内容に戻して。

今年の最後のセンタームーンはNo.882「今年のセンタームーンを撮ろう」に記載したとおり11/20でした(横浜)。その前日は部分月食で、センタームーンに近づく段階にある2021/11/19 20:00の写真を以下の写真1に示します。薄い雲を通した写真で本影食が終了したばかりで右端が少し暗くなっています。翌日センタームーンと上記撮影時の秤動値を示します。撮影写真はセンタームーンになる半日前ですが離れすぎています。当日は月食に集中しすぎてこれ以後のセンタームーンに近づく写真は撮っていません。

2021/11/19 20:00 撮影写真
地心 (経度、緯度)  1.58°  0.38°
測心 (経度、緯度)  2.09°  0.84°

2021/11/20 07:00 ほぼセンタームーン
地心 (経度、緯度)  −0.94° −0.26°
測心 (経度、緯度)   0.16°  0.18°

写真1 2021/11/19 20:00の部分月食・本影食直後

それでは今後のセンタームーンが見られるのはいつだろうかと秤動図で確かめてみました。秤動図は「ほんのり光房」の久保庭敦男様から教えていただき作成したものです。

来年一年を通した秤動図を図1に示します。座標原点に位置する場合はセンタームーン、各座標点は見かけの中心の位置を示します。例えば第一象限(経度秤動も緯度秤動もプラス)にあった場合は月の真の中心は逆に第三象限、左下に回転していることを意味しています。2022年は残念な事にセンタームーンどころか、1°以下にさえ原点に近づくことがありません。今年は「ほんのり光房」様の(センタームーンを観よう・Part1)に詳しく解説されていますが当たり年だったのです。

図1 2022年の秤動図

それならば、センタームーンは諦めて逆に来年はこちらに向かない月面でも撮ろうと思いました。秤動が大きいと月の周辺や裏側につながる地形も見えますのでそれに注目されますが、それ以前に左右上下に大きく振れた場合、見た目の月面全体の違いを知りたいと思いました。天体シミュレーターで毎日の月面を知ることができますが、例えば左右上下に大きく真逆にくび振りした月面の差を知りません。秤動の解説等で何気なくくび振り運動の様子を見てきましたが、来年の場合を例にしてどの程度の差として見えるのだろうかと確認したものです。

上記秤動図から月が最も左右上下に向く日時を調べました。原点から経度と緯度座標で最も離れる日時を捜すと上図の赤いポイントになります。このポイントに意味があるわけではありません。これだけのばらつきがあるのですから、こちらの秤動の方が月の周辺近くが見えて良い等、いろいろ考え方があると思われますが、単純に計算判定しただけのことです。

この時の日時と測心の経度秤動、緯度秤動は以下のとおりです。

右上(第一象限の赤い点) 2022/01/07 10:00   7.95°   7.33°
左下(第三象限の赤い点) 2022/06/07 23:00 −7.61° −5.42°

これらの月面がどの程度の顔つきになるのか、StellaNavigator11やStellariumで調べてみました。上記時刻に近い現実的な時刻における画像は写真2および写真3のとおりです。月面はStellariumによります。南北の上下表示はStellaNavigator11を利用しフリーハンドで回転し、また、視直径の差も拡大率を調整して統一しました。なお、画像に対応する測心秤動は以下のとおりです。わずかな時間のずれでも秤動値に差が生まれてしまうのは仕方がありません。

2022/01/07 18:00  6.93°  6.83°
2022/06/07 20:00 −7.28° −5.70°

写真2 2022/01/07 18:00 Stellariumによる

写真3 2022/06/07 20:00 Stellariumによる

月面全体の向き(顔つき)が比較しやすいように陰になっている部分を調整して浮き出させていますので少し粗い画像になってしまいました。2022/01/07の月はやや左下に顔を向け、調べてみると右側には月の裏側に近いスミス海やフンボルトが見えるようです。06/07の月は右上に顔を向けている感じ。

GIFアニメにすると写真4のとおりです。満月状態で最大振れの違いを実例で見られると良いのですが、その例が存在するのかさえわかりません。月齢による月の欠け具合はここでは関係ありません。月の海等全体の地形模様の違いを見たかったのです。

写真4 秤動の差による月面の差 画像はStellariumによる

両者を比較するとこんなにも違うのかと驚きました。個人的になりますが今まで生きてきた中で見た目も違いがわかるのにこれを意識したことがありません、このような事象を知るとますます月の事が知りたくなりやみつきにもなります。来年の月も漠然と撮るだけでなく意識して撮ろうと。