1. はじめに

No.872No.873No.874(は参考用記事)に少し触れましたように2021/04/01 13:31のISS太陽面通過が思い描いていた中心線通過から外れてしまいました。当日はISS Transit Finderで中心線を通過すると予想された場所を選定し、その地点を入力としてステラナビゲータ11およびHeavens Aboveでも確認していました。

同じように撮影場所は異なりますが「ほんのり光房」様でも同様の撮影が試みられ、同じようにずれたことが報告されており、さらにこのずれについて別の記事として分析されています。ずれは予想に採用された軌道要素TLEがその採用以後の軌道の変化にも追従しているかどうかで左右されるようです。TLE軌道要素データの記述上の問題ではなくて刻々と変化するTLEの採用如何によるもので精度が決まるように思われます。ISS Transit Finderの案内には精度について、文末で同様の説明がなされています。

天体接近通過や太陽面および月面通過の撮影にはCalSkyのサービス停止後、ISS Transit Finder、ステラナビゲータ11およびHeavens Aboveが個人的に利用している有力なアプリです。これら3種のアプリの併用で撮影実績は少ないのですが撮影に驚いた記憶は無く大きくずれた認識もありませんでした。このため今回の太陽面通過のずれが大きく感じて気になってしまいました。

そこで、過去のデータを予想通過コースと実写結果を比較し、定量的ではありませんがどの程度ずれていたか確認しておくことにしました。なお、これらの比較結果は一般的なものではなく、自身の個人的な確認に過ぎません。場所の選定等には主観、判断が入り共通性があるものではないと考えられるからです、参考データです。

結果は以下に示しますが、今までもこれらのずれは見られており、今回の通過時のずれはやや大きいものの過去の実績データの範囲内でした。もちろん今までにアプリが予想した結果と大きく外れたことはありませんが、この程度のずれは承知した上で今後も利用しようと思います。(これらしか頼りにするアプリがないので)

2. 予想と写真のずれ実績データ

過去1年間でISSが天体に接近通過を含め、拡大撮影として成功した例を選び出しました。以下の表1にまとめました。

表1 ISS天体見かけ接近通過撮影実績

上記撮影例の内、太陽面通過と月面通過の4例(No.744→2020/08/30太陽面通過、No.833→2021/01/20月面通過、No.845→2021/02/06太陽面通過、No.874→2021/04/01太陽面通過)について通過予想と実写データを比較することにしました。2021/02/17は強風下で撮られた写真ですので対象から外しています。通過時刻は撮影記録から算出したもので、予想と比較した結果、2021/04/01の2秒差以外はドンピタリか1秒以内の差でした。拡大撮影ですので撮影開始時刻の精度は赤道儀で追跡しない場合はファインダーに留めておかなければいけませんので重要です。1秒以内はかなり正確だったことを意味しています。

次に最も興味のある通過軌跡との比較です。なお、予想した時の過去の再現はステラナビゲータ11以外はできません。調べた範囲ではISS TRANSIT FINDERおよびHeavens-Aboveは最新のTLEデータで予想しているためです(本来の将来時刻における予想アプリなため)。それでもISS TRANSIT FINDERは10日間前までは指定すれば計算が可能ですが(参考に計算できるようにしているためと思われます)、それ以前の日付は選択できませんので計算ができないようになっています。Heavens-Aboveも同様に一日過ぎればTLEデータが元期として更新されるためそのデータに基づいた過去の計算も可能ですが一か月以上も経過した場合は星図自体が変わってしまって再現は不可能です。

このため、自身の解析技術で軌道図が描ける方は「ほんのり光房」で注意されているようにその時点のTLEデータを保管しておくことが重要と説明されています。そのようにしておけば再現できるからです。

以上の各アプリの特徴から現時点で通過予想として比較対象になるのはステラナビゲータ11のみです。必ず3種アプリで確認してきているのですが今となってはこれらが全て一致していたとの証拠を示せません。ここではその代表としてステラナビゲータ11の再現を当日の予想としました。

比較結果を図1に示します。図が少し粗く汚れたイメージになってしまいましたが比較はできます。

図1 ISSの太陽面および月面通過時の予想(ステラナビゲータ11)と実写の比較

各比較写真は同一尺度ではありません、任意です。赤い点線がステラナビゲータ11によるISS通過予想線です。写真との比較で全ては通過撮影そのものは成功していますが、通過直線には微妙なずれが見られています。なお参考にステラナビゲータ11による再現データの一例を図2に示しておきます。

それぞれの写真の中に記載している説明で、左端日時に続くアプリは撮影前に予想に使用したアプリを示します。2020/08/30のみはCalSkyで中心線通過狙いの場所を選定しました。それ以外はISS TRANSIT FINDERで最初に撮影場所を選定し、その情報を元に撮影位置を入力としてステラナビゲータ11とHeavens-Aboveで確認していることを示します。右下に記載した「中心線ねらい」は中心線通過をねらうために場所を選定し、その場所で撮影したことを示します。

結果として赤い点線(ステラナビゲータ11)とのずれは大きくないように思えます。今回気になった2021/04/01の太陽面通過以外は、偶然でしょうか結果として中心線通過に近い方にずれていました。気にしていた2021/04/01の結果もずれが最も大きいのですがそんなにひどいものではなく仕方がなかったと思えます。

以上の結果は3種類のアプリで併用している限り、ドンピタリとはなりませんが、撮影を楽しむ者にとってはかなり有力なアプリと思われます。

図2 2020/08/30の太陽面通過時のステラナビゲータ11による予想図(半年以上経過しましたが再現)