気象衛星ひまわり8号から観える天体 (月の画像抽出)

1. はじめに

天気予報情報に関連して気象庁が公開しているひまわり8号の日本域上空の画像が参考になります。特に国際宇宙ステーション:ISS通過時撮影の日などは必ず晴れを期待しつつ確認します。
http://www.jma.go.jp/jp/gms/

このひまわり8号の画像には地球全体の写真情報も含まれており、しかも毎日10分間隔の画像が公開されています。この中に月が写っているとの情報を知りました。しかし、気象、自然現象の情報に関する利用が主目的ですので地球表面が写れば良くて地球の外側の宇宙の領域の撮影範囲は非常に狭くなっていて、この範囲にたまたま月等の天体が写るようです。このため月が写っている画像は多くはありません。

これらの10分間隔の画像はデジタルアーカイブとして下記から閲覧、DLが可能です。もちろん利用の制限はありますが非営利目的の研究・教育のためであれば大きな制限はなく、当然ながらNICTのクレジットが必要のみです。
国立研究開発法人 情報通信研究機構NICT
http://www.nict.go.jp/
http://himawari8.nict.go.jp/

これらの情報に興味を持ち、ネットで調べた結果、下記サイトが非常に詳しく豊富に整理、解析されており、とても参考になりました。
「ほんのり光房」
http://kuusou.asablo.jp/blog/

手始めに、気象衛星ひまわり8号の1年間分(2016)のカラー写真1年間×365日×24時間×60分/10分撮影回数=52,560枚を対象に月が写っている写真を選び出しました。月が写っていない写真が多いので探し出すのは時間を要します。そこで簡単に見つけ出す方法として星空天文シミュレーター、ステラナビゲータ11を利用することにしました。

ひまわり8号は地球から高度35,786km(参考にISSは約400km)の赤道上空の静止衛星です。ステラナビゲータ11では地球上の任意の位置の設定で空を表示できるのですが、月、太陽系惑星以外の位置を設定できません(使用方法を見逃していなければ)。このため、人工衛星ひまわり8号位置からの宇宙空間の表示はできません。

そこで、疑似的に観測位置をひまわり8号と対角位置になる大西洋、ブラジル近くの赤道上にして天頂を表示し、それがひまわり8号が撮影している地球とその先にある宇宙、天体の画像と同じであると仮定しました。観測位置はひまわり8号の東経140.7°ですので西経39.3°としました。

三角関数から地球の半径(赤道上半径6378km、極半径6357km)、ひまわり8号の高度位置(上述の距離)から観た地球中心及び地球周辺の角度は8.6°(ステラナビゲータ11では高度81.4°)と計算されますが、地球の外側にならないと地球に隠されてしまいますし、外側過ぎると写される範囲から外れてしまいます。

最初に月が写っている写真の日時を上記条件下のステラナビゲータ11で再現し角度を確認し、これを数回繰り返すと以後は逆にこの時刻に写っているはずと時間誤差+-10分(最大の誤差でも写真+1枚分の誤差)程度でヒットするようになりました。後述しますが、天頂から10°の目盛り線を目標にすると良いようです。今回は2016年の1年間分を全部確認するのに1日かかりましたが惑星や恒星の写真も気になり、位置情報の記録等もあったためで、大半は写真のDLで費やされました。2016年分に関しては画像ファイルが無い場合もあり、また見逃した写真は当然あると考えられますが結果として105枚が見つけられました。目的を決めて余計な作業を除けば2017~2019分の写真に関しては数時間程度で収集できると考えられます。

現実に2017年の1年間を例にして52,560枚の写真の中から満月近くの写真を拾い出すことを目標に実施すると1時間もかかりませんでした。(但し、天体像は暗いので、新月近く、惑星、恒星を対象するともっと時間を要すると考えられます。一番のネックはオンラインの画像では地球は明るく写っていますが天体は暗くわかりにくいことです。DLして画像調整しないと写っているかどうかはわかりません。これが一番時間を要します)

2. ひまわり8号で天体が写る領域

月に関して2016年の1年間に写っている画像をDLして整理してみました。もちろん人間の目で最終確認していますので見逃した画像の可能性が考えられます。

 

2.1 ひまわり8号の画像に月が写っている領域

画像の例はNICTのページのとおりです。
http://himawari8.nict.go.jp/
2016年分の中から105枚を抽出できましたが、これらの画像を比較明処理して1枚の合成写真にしました。図1のとおりです。

図1 ひまわり8号が撮影した地球で月が写っていた写真(105枚分)

月は暗く写っていますので、画像処理して明るく見えるようにしています。地球の部分は105枚を重ね合わせていますので、雲で真っ白になっています。

図1に示すように月が写っている個所は地球の周りの狭い範囲にしかありません。写真のコーナーは一枚もありませんでした。これは抽出作業していて知ったことになりますが、気象衛星ですので、地球が写っていれば良いので周辺はおまけと言うことです。

特に日本時間で深夜に多く見られましたが、太陽光の影響で、地球外の個所がギザギザに写る領域のあることがわかりました。これを図2に示します。ほとんどの写真では気が付きませんが、画像処理すると浮かび上がって様子がわかります。このように地球外の狭い領域に入らないと画像として現れません。このように途切れた画像、またスキャンの時間ズレで月の画像が半分不連続にズレているものも多くあります。

図2 地球外の撮影範囲を示す例(2016/09/30 22:30の写真)

 

2.2 ステラナビゲータ11による検討

前項に示した105枚の写真は撮影時間が判明していますで、それをステラナビゲータに入力すれば月の位置がわかります。方法は1項で記述したとおりですが、その他、関連する条件として、心射図法表示(天体が写り込むひまわり画像の取得時刻を知ることが目的ですので何でも良いと思いますが、この方法が地球の向きと一致しているので比較しやすい)、方位は天頂、時間は日本標準時にします。この状態でステラパッドの時刻をクリックすれば即表示できます。

105枚分を図1と同様に処理すると図3のとおりです。

図3 ステラナビゲータ11による月の位置情報

ひまわり8号から見た地球の周辺は天頂から8.6°なのですが、この図ではそれよりもやや外側でやや左下(地球の画像では南西側)にシフトしているように見えます。地球の内側では隠れて写りませんのでどうしても外側になることが考えられます。シフトの理由として白道の影響等が考えられますが確認していません。

明確なのはこの部分に天体が差し掛かった場合は写っている可能性があるということです。
これによって、1年分は明るい月の場合は1時間弱で確かめられ、DLできました。

なお、参考にこの方位と高度の関係を図4に示しました。天体像写真の抽出の参考になると思います。