天体写真または動画ファイルをPIPP、AutoStakkert!3およびRegiStax6の利用によってセンタリング化(固定化)動画および一枚の静止画を得るまでの流れを記録します。スタック処理プログラムは以前から使用していましたので簡単に、その前処理ソフトPIPPの手順に集中して記述します。今回はCOOLPIX P1000で撮影された月の拡大撮影、動画の例です。なお、この記事は特集、参考記事の「天体を画面中心に固定映像化(動画)する方法」からでも引用できるようにしています。

ここでは主にPIPPの処理手順を記録したメモのようなものです。上記カメラによる4K動画はトラブル無く処理できた例で他の動画フォーマットでは試していません。マニュアル(http://docs.sakuraweb.com/PIPPmanual_JP-web/manual)が公開されていますのでそちらを利用すると良いでしょう。

スタック処理プログラムばかり利用していてPIPPは最近教えていただきました(上記参考記事の方で少し触れています)。スタック処理に慣れていればPIPPが驚くほど高速化に繋がり、かつ応用範囲が広がるアプリケーションと感じると思われます。

1. 原動画ファイル

COOLPIX P1000で2019/10/09 19:11に撮影した月齢10.6の4K動画を例にします。ここで示す動画は説明表示用としてサイズを小さくしたもので、処理は元の3840×2160のオリジナルサイズのまま実行しています。

右からアルプス谷、プラトークレーター、虹の入江が映っています、映像は地球の自転により右に流れています。

動画は流れていた方が天体写真のように見えて面白味があるのですが、ここではPIPP使用の具体的な手順を示すためプラトークレーターと虹の入江の二か所(アルプス谷は後半フレーム外になってしまいますので対象外)をほぼ画面中央の位置に固定化した映像に再編集することを目的とします。

2. PIPP前処理による被写体固定化映像の取得

原動画ファイルから、目標被写体を固定化させた映像をPIPP使用により取得します。

PIPPに読み込ませた後、以下の手順で進めます。

(1) 「Source Files」では右下にあるSolar/Lunar Close-upに「レ」チェックします。

(2) 「Input Options」は素通り。(Input Frame Colour/MonochromeではAutoDetectかColourを選択。デフォルトはAutoDetect)

(3) 「Processing Options」では左側のConvert Colour To Monochromeは「レ」チェックは無しです(カラーのまま)。右側ではStabilisation関連はデフォルトのまま、Anchor Feature Box(AFB)とArea Of Interest(AOI)はフレーム内に赤枠と青枠で設定します。フレーム画像は右上にある「Test Options」ボタンをクリックすれば現れます。

アンカーAFBの設定は今回月の映像で右側への流れを停止させるためであり(センター化とは異なりますが固定化するためのエリア設定)、赤枠中央をマウスでクリック、ドラッグで移動させます。今回は上記二つの地名の位置の中間にある小さなクレーターにしました。さらに四隅の部分で赤枠の大きさ、範囲を決定します。

AOIは「Enable Area Of Interest」に「レ」チェックすると青枠が表示されます。クロップ領域指定ですのでこの青枠範囲内が新たな映像となります。最初のフレームと最終フレームの両方に映っている個所を確認しその範囲内にしました。四隅の四角部分をクリックして範囲を指定します。ここでの例では設定した範囲が3000×1800程度になってしまいましたのでFrame Resize(reduce)はResize Framesに「レ」チェックしてWidthを1920と縮小することにしました。

(4) 「Output Options」では左側のOutput FormatをAVIを選択し、右側のAVI File Optionsでは(MPEG-4 Lossy Compression)を選択しました。Use Same Framerate As Input Video If Possibleは「レ」チェックして撮影時の通常のFramerateにしました。

(5) 「Do Processing」で左側のControlでStart Processinボタンをクリックすれば新たな動画ファイルが出来上がります。その動画を以下に示します。動画サイズは表示のため縮小しています。

青枠の範囲設定によりクロップされ、原動画よりも拡大された映像になっています。右側へのシフトは無く、シンチレーションのみが表現されています。

3. AutoStakkert!3による処理とRegiStax6によるWavelet変換

上記固定化した動画を使用してAutoStakkert!3(簡単ですが特集、参考記事AutoStakkert!3.0による処理の流れに手順など)に読み込ませるとファイルフォーマットが自動的にコンバートされ、その後、Surfaceモードを選択してAnalyseボタンを押します。解析後、フレーム画面の方でPlace AP gridを押し、メイン画面に戻ってStackボタンを押せば画像が得られます。この程度のフレーム画像サイズですと全てが1分以内で終了しました。

この画像では少しぼやけた感じもしましたので、RegiStax6でWavelet変換してアンシャープ調にして少しきりりとさせました。その画像を以下に示します。