再度、ISSにドラゴンが追いかける様子を2023/03/16のISS天頂通過時のCOOLPIX P1000による4K動画を基に整理しました。ISSの拡大動画および画像の詳細はNo.1150、そしてISSとドラゴンの画像はNo.1151に示したとおりです。

本記事ではNo.1151と比べて内容の大きな変化は無いのですが、撮影データが増えたことが特徴です。

最初にISSと共に後ろに続くドラゴンの映り具合を動画全フレームについて確認しました。ISS上昇時には光る点(ドラゴン)は見つけ出せていません(強烈な明度を上げて確認をしているわけではありません)、また、天頂通過しても高度がかなり低くならない限り両人工天体は写っていませんでした。原因は前者は太陽光反射による明るさが乏しいこと、後者は両人工天体同士が離れすぎて焦点距離3,000mm相当(P1000の定義で125倍)の画角内には収まらないためです。眼視で見えたとの情報もありますので標準レンズで明るく撮れば天頂通過時にも光跡線や動画による光る点の移動は撮れた可能性があります。

今回は、ISSが天頂を通過後、1分以上経過し、高度が89°から35°程度にまで下がった時点で両方が写り始めていました。全画像をSiriusComp64で比較明処理して画像1に示します。比較明処理の前にはPIPPによりISSを画角内の下部中央に固定されるように全画像を処理しています。センタリングせず下部中央で固定したのはその上の光る点(ドラゴン)が写る枚数を増やすためです。画像はISSにとって過露出気味になりますが、ドラゴンの光る点を浮き出させるため明度を上げています。ISSは300枚以上の比較明処理ですが定位置のみの画像にしているので一点に集中しています。

光る点を時系列に追いかけると高度の低下と共に見かけ上、ISSに近づいていることがわかります。このような動きから白い点はISSを追いかけているドラゴンと考えられます。理想的にもしISSを画角内固定位置のまま自動追尾により連続撮影ができれば拡大撮影においてもドラゴンが一本の線上に乗りながらISSに近づく様子が表現できると考えられます。

画像1 ISSとドラゴンの拡大撮影の光跡 2023/03/16 18:56:24~18:57:07 COOLPIX P1000 ISO-400 f/8 3,000mm相当 1/500秒/フレームの4K動画からPIPPにより取出し

この比較明処理に使用した全画像をアニメ風に編集してみました。動画1に示します。容量の関係から4Kからサイズを縮小、明度をさらに上げた映像にしています。暗い部分に上からISSに近づくようにチラチラしているのがドラゴンです。

ISSとドラゴンが同じようにチラチラ動いているように見えれば臨場感が得られますが、ISSを定位置に固定した画像処理ですのでドラゴンのみがブレているように見えてしまいます。実際に撮った画像なのですがドラゴンのISSに対する相対的な動きを示している映像ではないことに注意する必要があります。チラチラしているのは前記したとおり画像前処理の際のカメラ回転ブレによるものでしょう。

動画1 ISSを下部中央にISSを固定した画像処理した場合のドラゴンがISSに近づいている様子のアニメ

上で示したように画像1や動画1ではISSに対してドラゴンがふらついているように見えてしまい現実的ではありません。ここではほぼ1秒間隔の静止画を選び出し、10枚(11秒間)を並べて示します。その方がISSとドラゴンの位置関係が最もらしく見えると考えたためです。

画像2にISSとドラゴン(点像)を示します。4Kサイズの画像からISSとドラゴンが写っている幅に狭めて切り出し、10枚を一枚にまとめました。ISSとドラゴンの位置関係は撮影したままの写りです。ISSの進行方向は画像下端、四角で囲った画像はそれぞれISSおよびドラゴンを3倍に拡大したものです。かなり遠ざかっているのですがISSとわかります、ドラゴンは点でしか写っていません。画像3に画像2の明度を上げてISSとドラゴンが見えるようにしました。時刻は動画ファイル情報からのコマ数からの換算値、高度および測心距離は同時刻におけるステラナビゲータ12によります。観測地点は横浜です。

今回、焦点距離3,000mmの撮影はISSとドラゴンのランデブーを意図にしていません、ISSの拡大撮影が目的です。今回のISSとドラゴンが離れた条件で、このような拡大した単一画像の撮影例は初めての経験で、拡大率も偶然にちょうど良かったように思います。以前、ネットで、ISSのすぐ隣にドラゴンがいて一緒に撮られて超拡大撮影例を見たことがありますが、個人的な趣味になりますが光跡も良いのですがそのような単一画像も撮りたいものです。

画像2 ISSとドラゴン COOLPIX P1000による焦点距離3,000mmによる映像から取出し(原画のまま)

画像3 ISSとドラゴン(画像2をそのまま明度を調整)

個人的にISSとわかる写りですし、ドラゴンと一緒の画像が気に入ってしまいました。1カット写真を反時計廻りに回転してこれも記録に残すこととしました。画像4に示します。

画像4 ISSとCARGO DRAGON CRS-27の一枚画像(画像3から1フレームを選び反時計方向に回転 左から右に通過している様子)

備考(2023/03/25追記)

(追記1)

焦点距離3,000mm相当でISSとドラゴンが離れた状態で画角内に捕捉できたのはラッキーでした。光跡データの多い中、ISSの姿が写り、光る点に過ぎませんがドラゴンと一緒に単体画像として得られたのは良かった。

参考として、それではISSとドラゴン(補給機)のような二つの人工天体を独立に離れ、かつランデブー状態で拡大撮影した例があるかどうかネット内で検索して調べてみました。

一般的なブラウザー検索でリストアップされたリンク先、また、AstroArtsのギャラリーで人工天体の分類として対象となる全画像を確認しました(今回JAXAのアーカイブまでは調べていません)。ほとんどが二つの人工天体の光跡線か、拡大撮影でも補給機がドッキングしている状態の画像でした。

それでも数少ないのですが、以前のスペースシャトル、欧州補給機の人工天体が独立に分離した状態でランデブーとして拡大画像がありました。参考に以下にリンク先を示しておきます。まだ他にありそうですが調べ切れていません。このような拡大撮影チャンスに巡りあいたいものです。

1.  Thierry Legault – International Space Station and Discovery – STS-133 (astrophoto.fr)

2. 坂井美晃様 2013/10/28 “アルベルト・アインシュタイン分離” AstroArtsギャラリー https://www.astroarts.co.jp/photo-gallery/photo/16318

(追記2)

縁側掲示板「国際宇宙ステーションを撮りませんかの掲示板」に、サイエンス@千葉さんの同日03/16のISSとドラゴン補給船を撮影された画像が載っていました。https://engawa.kakaku.com/userbbs/2193/#2193-628

天頂到達直前で、ISSに続いてドラゴンが約1秒遅れて追いかけている20枚の比較明処理と説明されていますので、最初は写野右下からISSが写り、ISSが左上に差し掛かったと同時にドラゴンが右下に写り、以後、ドラゴンが左上に通過したと想像しました。