2023年の月の秤動を自身でも確認しました。図1および図2に地心秤動と測心(横浜)秤動の年間連続変化を示します。地心秤動の図は天文年鑑2023の12か月分の図を重ね合わせた図と同じになります。横軸が経度秤動、縦軸が緯度秤動を示します。図中には表1の満月の位置も示しています。

2022年に続いて2023年もセンタームーン(月面が地球側に真正面に向く)はありません。来年2024年になるとセンタームーンのチャンスがやってきますのでそれまで待たねばなりません。

一方センタームーンが無くても大きな秤動となれば普段は見えにくい月縁近辺の裏側が見えるようになります。その裏側に近い地名の典型例として、北から時計回りに一周するとフンボルト海、縁の海、スミス海、フンボルト、南極付近、バイイ、東の海、パスカル等があげられます。緯度秤動がマイナス側に大きく振れるとアルテミス計画で着陸が予定されている南極付近の裏側も少しだけ見えるようになり面白そう。

また、No.1032の例のように秤動値が正反対の大きな秤動差の月同士を並べて比較すると月面の見え方が大きく変わることに驚くでしょう。参考に2023年の秤動経度および緯度の最大値、最小値それにセンター・原点より最も離れている秤動値(秤動経度および緯度の二乗和平方根の最大と最小)を月齢と共に表2に示します。単純に数値の大小から選んだものであり実際に光って見えるかどうかは確認していません。シミュレーターで月の秤動と比べ該当する月面のどの部分が見えるか確認すると良いでしょう。

ここでは今年、満月月面で大きく異なる例として、2023/03/07と2023/12/27としてStellariumのシミュレーション画像で比較しました。画像1に示します。南北は縦軸上下に合わせて回転しています。これを実写で確認するのは楽しいものです。

月に関してはこのような秤動による楽しみのほか、月食(今年はわずかな部分月食程度です)、水平・反転月、恒星の掩蔽、それにマジックムーン(満月と半月の同秤動の合成月の美しさ)など、たくさんあります、今年もチャンスには撮影に臨みたいと思います。

図1 2023年の月の秤動(地心秤動) 01/01~12/31の連続表示

図2 2023年の月の秤動(測心秤動:横浜の場合) 01/01~12/31の連続表示

表1 2023年満月の秤動 測心秤動は横浜地点 時刻は30分前後を近い方のhourへ

表2 2023年の月の秤動(秤動経度、秤動緯度)の最大値、最小値等 時刻は30分前後を近い方のhourへ

 

画像1 2023年の満月の見え方が大きく異なる例 Stellariumによる 2023/07/03と2023/12/27(時刻を夜へずらす)との比較